アサシンの夜明け
籠の中の哀しい鳥D
男の子の父親は言い澱んで居たが、男の子の頭を撫でながら、言い含める様に話し出した。
「坊主……あの子なんだが、帰らなくては、いけないんだ……」
男の子は予感はしてたのだけれど……認めたくは無くて、そんな事を云う、父親を生まれて初めてにくんだ。
「なんでだよ、とうちゃん……おいら、やだよ。レイをつれてかないでよ……やだ! ぜったいやだからな! 」
「坊主……だから、言ったじゃあ無いか、預かり者だって……」
父親の話しを最後まで聞かずに男の子は走って行った。
レイの元へと――
何時もの小屋に入るなり、男の子はレイの手を取り優しく話し掛ける――
「レイ、海をみにいこう」
レイは男の子を見上げ「うみ?みにいくの?」とにっこり笑う。
「そうだよ、海だよ……」
ふたりは初めて一緒に小屋から出て海に向かい走り出す。
レイは久しぶりの外の空気をいっぱいに吸って、鈴が鳴るような声で笑っていた。
その、無邪気なレイの姿を見ては、男の子は涙が浮かん来て、服の袖で涙をゴシゴシ擦った。
『おいらがないたら、レイがしんぱいする――』
「レイ、こっちにおいでよ」
男の子は自分だけが知っている秘密の場所へ、レイを連れて行った。
そこは、浅瀬にあり引き潮の時だけ、通れる洞窟みたいになって居る場所で子供がやっと入れる位の所だった。
「レイ、てをだして、めをつむってごらん」
レイが言われた通りにすると、手の上に、コロンと何かが置かれた。
開けても良いよ。と言われ、レイがぱっちり目を開けた――
レイのちっちゃな手に乗っかってた物、それは――男の子が一生懸命作った、木彫の小さな鳥――
「かわいい! 」
レイは喜んでゆびでツンツンつついたり、じっと見つめて居る。
「レイ……おいらのこと……わすれないで……お…いらも…わすれない…から……」
ずっと堪えてた涙が積を切った様に流れ、何も言えなくなる。
「どぅしたの? いたいの? 」
レイは男の子がどこか痛いのかと思い頭をなでる。
男の子はレイを抱きしめて、いっそう声をふりしぼり泣き出した……
レイ……だいすきだよ。
ずっと……ずっと……
[前頁][次頁]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!