アサシンの夜明け
籠の中の哀しい鳥C
抱き締めた腕の中で、綺麗な子は震えている。まるで、雨に濡れた小鳥の様に……
男の子は、寒いのかと思い毛布でくるんであげ、食べ物を口に運んだ。けど、綺麗な子は首をふるふると横に振って、口を付けようとはしない。
『どうしよう・・・たべないと、しんでしまう・・・』
そう考えただけでも男の子は涙が出そうになり、絶対食べさせようと思った。
「おねがいだよ。たべないと、しんじゃう……おまえがしんだら、おいらもいきてられないよ」
とうとう、男の子も泣き出してしまった。
その時、綺麗な子は震える手でスプーンを持ち、スープを一口飲み込んだ。そして、男の子に向かって、ニッコリ微笑みかける……
男の子は、ほっとして綺麗な子の頭を撫でた。父親がよく、自分にしてくれるように――
自分の名前を言って綺麗な子に名前を聞いてみる。
「れいじって、ゆうの……」
男の子は異国の名前は知りませんでしたから、その名前が女の子のものでは無いとは、思いませんでした。ただ、綺麗な子は声も、可愛いのかと、思っただけで……
「れいじかぁ、なんかいいづらいな、レイでいいかい? 」
れいじはコクリと首を下げて、レイ? と、笑う。
その日から、レイと男の子は、毎日一緒だった。周りの大人もレイが元気になってゆくのを、微笑ましく見守っていた。
ただ一人、男の子の父親を除いては――
∽∽∽∽∽∽∽∽
ある日の事、男の子は何時もの様にレイの所へ行こうとしていた。小さな袋を大切に持って……
「おい坊主、こっちに来い」
父親に呼ばれ、男の子は渋々近付いて行った。
「坊主……あのな……」
父親が珍しく、何か言うのをためらって居るのを見て、男の子は嫌な予感がするのを、感じずにはいられなかった――
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