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アサシンの夜明け
籠の中の哀しい鳥B

「坊主、こっちだ」

 父親に呼ばれ、男の子は村外れの漁師小屋に来ていた。

「とうちゃん。こんなとこにあの子がいるのかい? 」

 その小屋は、漁師たちの道具とか置いてあるところで、お世辞にも綺麗とは、言えない場所だった。

 あの、綺麗な子には似合わない、粗末な小屋――

 なにか、怒りと悲しみが、ごっちやになって、男の子は泣き笑いの様な顔になった。

「坊主、どうしたんだ? 」

 男の子は首を横に振りうつ向く。
 父親は入り口に何故か、新しく取り付けた鍵を開け、男の子の手に握らせ、中に入るように言った。
「あ、忘れてた。中の子にコレを食べさせてあげなさい。それに、帰りは鍵を閉めて来るんだ」

 男の子の手にバスケットを持たせ父親は祝いの席に戻って行った。

『なんで、カギなんか、しめるんだよ……』

 変に思ったが、あの子に会えると云う気持ちの方が勝り、ドアを開けた――







 小屋の中は結構整えてあり、隅にはベッドまで置いてあった。
 ベッドは、ほんの少し盛り上がっており、微かに上下してる。

『ねてるのかな? 』

 近付いて、ソッと毛布を捲ると、両手で自分の体を抱き、丸まっている綺麗な子がいた。

「なあ、おいら食べものを、もってきたんだよ」

 声を掛けても、綺麗な子は振り向かず、ぎゅっと強く抱きしめる。
 男の子は悲しくなって、綺麗な子の髪を優しく撫でながら、話し掛けた。

「おいらは、おまえの"みかた"だよ」

 その言葉に、綺麗な子はピクリとして、ゆっくりコッチを見た」

 かなり、やつれては居たけれど充分、綺麗な子だ。
 軽く、くるくるした髪は少し茶色で、日など焼けた事などない白い肌、愛らしい瞳に、可愛いぷっくりとしたくちびる……

 それなのに、両の目からは涙がポロポロとこぼれていて……

 守ってあげたい……

 男の子は綺麗な子をぎゅっと抱き締め何度も、何度も、言った。

「おいら、おまえをまもってあげるから――だいじょうぶだよ」







思えばこれが――







男の子の初恋だった――







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