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アサシンの夜明け
懺悔@

 新年を三日ほど過ぎたばかりの、街全体が凍り付くような寒い朝の事だった。

 その街は希望という言葉さえ虚しい――

 住民は皆、疲れた顔で常に飢えてぎらぎらしていた。
 スラム街の道端には浮浪者の凍死体が転っていて側には子供たちが素足で蹲っている。
 どの顔も薄汚れ、飢えの為に痩せ細り泣く気力も無い。

 その救いがない光景の中をブーツの踵を鳴らしながら歩いて来た者がいる。

 まだ若い男だろう。
 全身黒い服装で緩くウエーブがある肩までのブラウンの髪。
 サングラスを掛けているが、それでも美貌を隠せない。

 どこか危険な香りを纏った男を皆、恐れの目で見守っている。

 男は教会の前で不意に足を止め、重々しいドアの前に立ち、両手で勢いよく開け放った――

 朝の礼拝の最中で讃美歌を歌っていた声が止まり、一斉に此方を見る。
 救いが無いこの街では、信仰に縋るしか生きていけないのだろう、座席はほぼ満席になっていた。
 神聖な儀式の最中に無遠慮に入って来た男に、何事かと咳(しわぶき)ひとつ聞こえなくなった。

「神父は何処?」

 近くに居たシスターに聞くと、怯えた顔をして震える指で奥を差し示しめした。

「ありがとう……」

 男が礼を云うとは思わなかったのだろう、意外な顔をしたシスターを残し、真っ直ぐ奥にある懺悔室へと向かう。



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