[携帯モード] [URL送信]

僕の瞳に映るあなた


 僕が同い年の姉である涼と始めて会ったのは、そろそろ夏休みも終る頃、まだまだ残暑厳しい八月の終わりの事だった。

 殊更暑い日だというのに、長袖のブラウスとズボンを着た涼を見て。

(こんな、汚い子が僕の姉さんだなんて……)

 そう思った。それほど、その子は何日もお風呂に入って無いように見えた。

 涼は母親に付き添われ来ていたが、家の玄関先で父に引き渡すと、何も言わずに帰って行った。

 涼は父に駆け寄って行ったが、父は何も声を掛けずに家に入ってしまった。

 後に残された涼は、きつく唇を噛み締めていた――

「お嬢様。お家の中に入りましょう」

 家政婦が同情の眼差しで、涼に声を掛け連れて行った。

 あの時は、涼の事を血の繋がった姉だとは思いたくなかった。

 夕食の時間になり、家族が全員揃った時、家政婦が涼を連れて来た。

 涼は、お風呂に入れられたらしく、さっぱりとしていたが半袖のワンピースから出た手足には、無数の痣があった。



[前頁][次頁]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!