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 商品のモニターって。……枕?
 大人の枕?……って意味がわかんないんですけど。

 なのに、隣に立つ青幡は要綱にさらっと目を通してから、理解したような表情で応えていた。

「分かりました。……オフィスのセキュリティは?」

「ノープロブレム」

「ふたりで……って事ですね?」

「そうです。主観に傾倒する事を避ける。そのためのパートナーです」

 課長の回答によって、青幡のいかつい表情が少しだけ緩んだように見えた。

「行こう」

「え?」

 青幡は課長に一礼してから戸惑ったままのおれを急いてオフィスを出た。

「青幡さん……仕事、分かったの?」

 追いついたおれは青幡の隣に並んだ。
 コイツはホントに見上げるほどデカい。

「今までの業績を買われたってのなら……なんとなく」

「おれ……自分と同じ仕事してるやつ、初めて見た」

『特営』はシークレットだ。自分がそれだと公言する奴なんていない。だから、知りようもなかった。

 青幡はおれをちらりと見てから、また廊下の奥を見つめて歩き続ける。

「……つか、アオハタってジャムみてえ」

 思ったままを言葉にして笑うおれを見て、青幡も表情を緩めた。

「高校まではジャムって呼ばれてた」

「マジで?……可愛い」

 全然似合わねーの。可笑しい。

「おまえの方が可愛い」

「え?」

 オフィスのドアを開けて、ぼそりと呟く青幡の言葉。聞き間違いか……と思う。

「シャワーどうする?」

 はい?

「ああ。どうせ後で使うか……」

 なにが?

「とりあえず今回の商品は三点。これは……ローション、と、こっちが、オナホか……」

 青幡はデスクの上に紙袋を置いて、淡々と中を確認する。

 おれは呆気にとられた。
 大人の……って、大人のオモチャ的な?

「これが?……モニターって、こんな……」

「ああ。性用品販売事業部からの依頼だからな。通信販売事業部と提携してシェアを拡大している。『つゆだくネット』って、知ってるか?」

「アダルトグッズの、通販の大手……」

「そう。あれが露田商事のアダルトグッズ販売事業所名だ。業績はトップクラス」

 そんな部署があったなんて、おれは知らなかった。

「露田商事は昔からソッチ方面で業績を伸ばしてきた会社だしな」

 ソッチ……って、アッチのアレ?つか、え?……ってなんでおれがオモチャのモニター?

「おれたちに求められているのは、その製品をチェックして使用時の注意事項を追加したり、消費者が適正な商品を購入できるように誘導する役割だ」

 真顔で解説してるけど、大人のオモチャで何するってんだよ。

 涼しい顔で背広を脱いだ青幡は、デスクの引き出しからハサミを探し出して、ふたたび紙袋を手にしてオフィスの奥にある扉を開けた。

 開いた扉の向こうにはデカいベッドが中央に鎮座している1kの部屋。
 外からの明るい陽射しが、広い間取りの窓全体から惜しげもなく注がれる、角部屋一等地。

 ……って、どう言う事だ?ここで、コイツとふたりでわが社の大人のオモチャを試せって事なのか?

 おれは青幡の背中を追った。



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