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 一度身体を拓かれると、後は坂道を転げ落ちるみたいに……なるわけない。

 あの翌日、身体は使い物にならなくて、有給をもらうための連絡を入れた。課長が出て、すぐに状況を察してくれて、深く理由を追及することなく休みをくれた。

 営業をかけるとき。そこにオプションをつける特権を認められているのが特別営業職だ。
 そんな社内の闇の部分に足を突っ込んでしまったおれは、突っ込まれる事も可能な『特営』として会社からは優遇されるようになった。

 接待の翌日は仕事にならない時もある。そんな日のための有給も多い。

 あの助教授はおれの試験官で。おれが、『特営』として使い物になるかどうかを見定めてもらいたいと営業本部長から言い含められていたようで。
 もちろんこんな事情は公から知った訳ではなくて、助教授からの指名でもう一度接待した時に聞かされて、おれは試されたんだな……ってコトを知った。

 取引先のおエライ様方が、接待の後に誘ってくる。
 それは上司を通してあらかじめ『特営』にも知らされている訳で、気分が乗らなかったなら断ってもいい。
 実際はそれをしなければ営業できないって事でもなかった。

『特営』は、捧げものではなく釣り餌だ。全ては自分の判断で、関係を有利に運ぶための手練手管が必要だ。

 気に入った『特営』に接待されたいがために契約を持ち込む者が居るくらいだ。
 しかも、余程の大口契約でなければおいそれと席を共にできない。
 おれは『特営』になって、初めて経済界での露田商事の力を知った。

 接待相手はクリーンなイメージを求められている役職者に限られている。
 彼らは一様にプレイに飢えていて、なまじ社会的地位なんてものがあるから、醜聞を恐れて風俗にも行けないらしい。
 箝口令が敷かれているはずの会員制クラブや料亭の中でさえ間諜が暗躍して、下世話な秘密が公然となり、この社会では命取りになるからだ。

 けれど、会社同士の繋がりは絶対だ。
 互いの関係が利益を生む以上、潰し合いなんてナンセンスな真似はしない。
 そこに安心を見出して、会社の重役連中は『特営』との関係を望む。

 縛って欲しい。打って欲しい。赤ん坊のように扱って欲しい。
 果ては聖水を飲ませて欲しい。針で刺して欲しい。カテーテルを入れて欲しい等々。
 奇妙な性癖を上げればきりがない。

 スタンダードにアヌスを肉棒で犯して欲しいというオーダーが一番の苦痛だったんだけど、それでもなんとか努力して『種付けして欲しい』という願いにまで応える事が出来るようになった。

 正直言って、そんなコトまで出来るようになるなんて信じられなかった。
 仕事への責任感ってものが、こんなにも自分をコントールするなんて不思議だ。
 そうして、そんな肉体労働に従事するようになってから、一年が経とうとしていた。



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あきゅろす。
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