2
勃起しないなら……という事で、しばらくの間は乳首とアナルのグッズをテストした。
そうなるとモニターはやっぱりおれの方で、締まりが悪くなるほど休みなく弄られることになる。
以前は普通のアナルスティックやアナルビーズくらいだったのに。最近になってからマニア向けの商品が持ち込まれるようになった。それはあまりにも凶悪な大きさで、おれには太刀打ちできそうもない。
だから、大きな商品のモニターは、志信が仕事を通じて知り合ったという拡張マニアのユーザーに依頼している。
そもそもあんなペットボトルみたいなデカいモノが入るってのが信じられない。信じられないけど、モニターはSM写真集のモデルをした時に、太い大根を入れてスタッフを驚嘆させたっていう強者だそうだ。
おれは無難な大きさの新商品を試すので精いっぱいだ。
だいたいSMのモデルとどうやってコネを持ったんだよ。
謎が多すぎるんだよ志信は。
「――挿れるぞ」
それまでおれのアナルを指で拡張していた志信は、やたら長いバイブを紙袋から取り出した。
当社のオリジナルでやっと完成したと言う。
挿入部分だけでもリコーダーくらいの長さがあって、太さも結構なものだ。
「無理」
そんなデカブツを挿れたら、おれは壊れる。
「大丈夫。意外と柔らかい素材なんだ」
志信はそれを両手でつかんで折り曲げて見せた。
パールピンクのそれには、蛇腹部分とバイブレーターの部分が三箇所あって自由に曲がる。可動域が広い。
「そんなん入るわけないだろう」
「おれが挿れるんだ。……大丈夫」
自信満々な笑顔はメチャクチャ色っぽくてやる気満々だ。
悔しいけど。おれは志信を尊敬しているから。志信にそんな風に誘惑されたら断れない。
仕事っていうか。ほとんど色事師ってカンジだけど。
有能すぎてツライ。
仕事なんだって分かってるのに、どんな時だって最高に気持ちよくいかされる。
先日のパルスは別物だけどな。
志信はおれの表情から同意を汲み取って、ゴムを被せたバイブに丁寧にローションを塗った。それは決して安物じゃない高価なもので、おれの体を気遣ってくれているって実感する。
実際このハンドクリームみたいなローションにしてから、体の負担が少なくなった。
トリートメント効果があるって売りだけれど、トリートメントが必要になるようなことをしなければいいだけのことで。
けれど、みんなやめられないんだろうなってこともよく分かる。
志信は、おれを横向きに寝かせて尻を広げた。アナルにあたるバイブは、少しずつ圧を加えてゆっくりとおれの中に押し入ってくる。
一瞬キツイと感じたけれど、それは本当に一瞬で。そこを抜けるとあとは抵抗なく体内に入ってゆく。
途端に浅ましい快感が湧き出てきて、なんだかいたたまれない。
今は勃起不全状態でよかったのかもしれない。
挿れられてすぐにフル勃起なんて、恥ずかしすぎるよ。
「大丈夫か、渚」
「うん……だい、じょぶ」
平気なふりして答えたけど、全然大丈夫なんかじゃない。
尻だけでもいけそうなくらい気持ちいいし。
なんなのおれ。なんでこんなに鳥肌立つくらい感じちゃったりしてんの。
もうホント意味わかんないし。
不埒な快感に集中していたら、さらに奥に挿れられた。
「――っ! あ」
思わず声が出る。
バイブの先が深く入ったのを感じたからで。奥まで開発済みのおれは、それを快感で迎えてしまう。
志信はおれの状態を知っていながら、外に出ているバイブの残り部分とおれのモノを密着させて、容赦なくスイッチを入れた。
「やーばーいぃぃぃっ」
突然の振動がおれの股間全体を襲う。
声を抑える事も考える事も出来ない。
冗談じゃない!
なんだよこれ!
壊れるよおれ!
「ふぅ…う、う、あぁぁぁ……」
全身に力が入って、意識していないのにアナルはバイブを締め付ける。それでさらにとんでもない刺激を受けるハメになるから、おれはただ叫ぶ事しか出来なかった。
「……いい…イイ! 志信、志信! …うあぁぁぁぁ…っ」
前立腺も精嚢も、性器全体をいっぺんに犯されて、気付いたらガチで泣きながら痙攣してた。
勃ってもいないのにこのザマって何なんだよ一体。
しょーもないモンばっかり作りやがって。
おれの体だってそうそうもつかっての。
もうホント勘弁してくれよ。労災だよ労災。
会社ぁ! 責任とれよチクショウ!
おれは、おれのものを握る志信の手を、精液でベタベタに汚していたみたいだ。
けれど、志信はその手を気にする様子もなく、おれの中にバイブを突っ込んだまま唇にキスをよこした。
まるで慰めでもくれるみたいに舌を吸われて。だけどそれは全然慰めにはなっていなくて。バイブに刺激され続けたおれは二度目の強い波に襲われた。
寒気なのか痺れなのか快感なのか分からない。けれど、頭の中で何かが弾けて真っ白になって、叫ぶように声を上げて盛大に啼かされていた。
それから何度もいかされて。出るものも出なくなって放心して。それまでの緊張が嘘みたいに解けて、頭のてっぺんからつま先まで脱力してベッドに沈み込んだ。
アナルでいくと、賢者タイムがなくて変な気分になる。ずっと気持ちいいコトしたいとか、もっと触れ合っていたいとか、キスして撫でて欲しいとか。色々と気持ち悪い欲望にまみれて、後で思い出すと消えたくなるくらい後悔するのに。そのときはそんな時間が欲しくてたまらなくて、その欲求に逆らえない。
おれは志信に抱いてほしいと甘えるんだ。
でも。……ああそうか。
今は、勃起不全なんだっけ。
おれは、志信に抱きついていた手をほどいて枕に頭をのせた。
すると、まだ発情している体を慰めるはずだったバイブは、快感で食い締めるようにねっとりと絡むアナルから、ゆっくりと引き抜かれた。
「あ…あっ、んぅ……な…んで」
抜かれるのも気持ち良くて、飢えた体が緊張する。
「――復活した」
「は?」
ベッドに箱ごと放られていたコンドームに手を伸ばして、手際よく装着した志信が、緩んだおれの体内に挿入ってきた。
熱くて、優しい志信のそこは、かさを増しておれを満たす。
抱きしめられて密着して、奥を捏ねられるように刺激されて。中まで愛撫されているみたいで、嬉しくて泣きたくなる。
「あ…あん、いい……志信ぅ」
やっぱり人肌に触れるのがいいと感じる。どんな玩具より、志信のものを挿れられるほうが蕩けてしまいそうなくらい気持ちいいんだ。
体中がとろとろに柔らかくなったような感覚に酔って、このまま空気中に溶けてしまってもいいと思える。
「――渚」
おれを抱き寄せて、おれを呼ぶ声が甘くて。
それが嬉しくて。何よりも心地いいと感じてしまう。
仕事が気持ちいいなんて、末期だ。おれ。
快感に全身を侵食されて、すっかり社畜になったみたいだ。
仕事帰りにふたりで飯を食いに行った。
今日はいつもより消耗したみたいで少しだるい。
食欲はあまりないんだけど、せっかく志信が誘ってくれたんだし。断る理由もない。
その店は、営業以外ではあまり縁のない個室のある日本料理店で、割烹と料亭の中間くらいのイメージだ。
店に入ると予約までされていたことを知って驚いた。
それこそ自分が営業をかけられているような気分になる。
「こんな店、大丈夫なのかよ」
「普通に飯食うだけなら大丈夫だ。飲むと高くつくけどな」
「じゃあ、飲みは後で」
「了解」
おれたちの給料なんてほとんど同じはずだ。
たまにいいものを食べたいと思っていても、予算に限りがある。
こんなことを話せるのは同僚ならではって気がするけど、そもそも同僚同士でこんな値の張る食事に出かけるかなって考えた。
女子会とかって、こんな感じなのかな。
たまには贅沢に美味しいものを食べましょうとか。頑張った自分にご褒美とか。
そんなフレーズを聞いたことがある。
男だって、男子会したっていいよな。
頑張ったご褒美に美味い飯。
男のご褒美に風俗ってのもアリだけど、それは遠慮する。そっちはあふれそうなほど満たされてると感じるから。
おれはいい。
おれは、いいけど。
「おまえ、彼女とか欲しくないの?」
料理の最後に炊き込みご飯が出てきて、それを食べながら質問すると、何言ってんのコイツってカオをされた。
「仕事中心の生活だから、寂しい思いをさせるだけだ」
「結婚とか……考えてないのか?」
「考えてるのか?」
志信は驚いておれを見た。
「――や、普通にそうなるのかなあとか。思うだろ」
「おれは仕事と家庭の両立なんて無理だな。家族サービスとか出来そうもない。浮気されるのが目に見えている」
志信はとりたてて気にする様子もなく言ってのける。
けれど、浮気される志信を想像したら、なんだか無性にムカついた。
「そんなことない。おまえ優しいじゃん。……寂しいから浮気するって、そっちの方がどうかしてる」
怒りのあまり座卓の上に乗り出してしまったおれを志信が笑う。
「例えだろ。怒るなよ」
おれの頭を引き寄せてキスを落とす。
まるで恋人でも扱うみたいに優しい。仕事上のパートナーだから大切にされているんだって理解はしている。嫌悪感はない。
むしろそれが嬉しいから、志信が大切にされなかったら腹立たしいんだ。
「EDになったら結婚は無理だけどな」
笑う志信は不真面目だ。
全然現実を見ていない。
こんな仕事を一生続けられるわけがないんだし。いずれは部署替えになる。
そうなったとき。
そうだ。
本当は、将来をどう考えているかって事を確かめたかったんだ。
けど、なんでおれ、こいつが結婚しないって聞いてほっとしてるんだよ。
性用品を試用して、商品を詳細にレポートする毎日。
ユーザーの尽きない欲望を刺激して、購買欲をそそるために定期的にブログを綴る。そのブログはユーザーには好評で。そんな仕事も軌道に乗ってくると、社内でも高い評価をもらうようになった。
商品開発部からアドバイスを求められたり、販売促進キャンペーンのスタッフに抜擢されたり。
おれたちは確実に、市場の表舞台へと上っている。
立て続けに依頼されて溜まっていたレポートが一段落したとき、久しぶりに営業を依頼された。
おれにくる仕事だから『枕』だろうなって察する。
今更そっちの仕事か……と、何となく複雑な心境だったけど。営業部長も時々出ているから。まあ、ありかなって思ったし。
相手は、初めての営業でおれに『枕』の手ほどきをしてくれた大学助教授だった。彼が教授になったお祝いとかで、これから更に取引が大きくなるだろうからと、おれが駆り出された。
ホテルでの祝賀会に招待されて。そして、変わらないパターン。部屋を取ってあるからと誘われる。
久しぶりの再会と言う事もあって、おれは少しだけ緊張していた。志信以外の相手とは、しばらくしていなかったから仕方がない。
けれど教授は、そこがいつまでも初々しくて可愛いと気に入ってくれた。
逆らう事も出来ないし、仕事だと割り切っているから、教授の愛撫は全て受け入れられた。
教授は少しだけ年をとったかなって感じた。けれど、ねちっこい前戯はさらに磨きがかかったみたいで。おれはふわふわとした気持ち良さに満たされて、柔らかい優しさに包まれた絶頂を迎えた。
終わったあとも、もっと欲しいと思ってしまうような余韻があって、年の割には鍛え上げられた胸に甘える。
「渚くんは可愛いね」
そんなことを言われて見上げると、ひたいにキスをされた。
「学長の娘さんとの縁談があってね。もう、こうやって楽しむことも出来なくなる。最後に、君に会いたかった」
そんなことを言われても、おれはどう答えていいか分からない。
複雑な心境でいたけれど、おれは生理的なものに抗えなくて。また求められて、導かれるままいかされた。
相変らず上手いのにな……って、妙な名残惜しさがあって。男が好きなら、なんで女と結婚するんだろうって思った。
ずっと気持ちは寄り添えないかもしれないのに。
結婚しない選択をする志信のほうがよほど誠実だと思えた。
週のはじめ。おれたちはパソコンの乗っかったデスクを挟んで向かい合っていた。
「――で、今日の得物はなんなの?」
「うん……」
「なに?」
依頼された商品について、なかなか説明してくれない志信。
ためらうなんて珍しい。
ずっと視線を逸らさないで見つめていたら、志信は改めて息を吸って背筋を伸ばした。
「尿道開発するぞ」
「へ?」
いきなり言われて変な声が出た。
そっち?
志信は、メーカーからの紙袋に手を突っ込んで、平たいケースを取り出した。
黒い革製でB5判くらいの大きさのそれは、ぐるりと囲うようにファスナーが付いていて。志信はそのファスナーを開けておれに差し出して見せた。
そこには数本の細長い金属製の棒が並んでいた。先端は繭のような形をしていて、それぞれ少しずつ大きさが違っている。見覚えのあるものだ。
「尿道ブジーだ」
何か罪悪感でもあるのか。志信の声が重かった。
「――知ってる」
「え?」
神妙だった表情が途端に緊張をなくしておれを見る。
「なんで……」
「おまえテストしてただろ?」
「形が違うだろ」
「特営だし」
答えるとさらに困ったような顔になった。
「挿れたのか?」
「うん」
「これを?」
「似てるけど少し違う。製造元の違いかな」
「そう……か」
落胆したように見えるのは気のせいだろうか。志信が商品の事でこんなに後ろ向きな態度を見せるのは初めてだ。
「気持ちよさそうだったよ。ほんとに気持ちいいのかは分からないけど。Mっ気のあるひとだったから、辱められて犯される感じがたまらなかったんだろうな」
「え?」
「ん?」
また違う顔だ。
今度は驚いてる。
「挿れたの、おまえ?」
「うん」
「あ…。ああ、そ……っか」
なんだか変な感じだ。
「なに?」
「いや」
気のせいかまた表情が変わった。
優しい顔でおれを見る。
そして、ゆっくりと息をしてから判決を下すようにおれに尋ねた。
「自分がされる覚悟はあるか?」
そうなんだ。
今度はおれの番で。おれが挿れられる側になる。
アナルは勢いに押されて教授にやられてしまったけど、これは自分で引き受けた仕事で。心してかからないとダメなんだって改めて考えさせられた。
「うん」
たぶん頼りない返事だったに違いない。
けれど、今まで自分でしてきたことを思い出して、今度はおれがされる側になるんだってことを覚悟した。
痛みはないんだってことは分かっている。相手は志信だし。気持ちいいことしかされないって知ってる。
「おれの体。お前にあずけたから。任せる」
本当にそんなふうに思っていたから抵抗もなく伝えると、志信は何かに取り憑かれたような顔をして席を立った。
真剣な顔をしたままおれの前にやって来て、なんだろうと思って見上げると、今度はやたらエロくて不謹慎な顔でおれを見おろす志信が、突然おれの首をつかんでキスをよこしてきた。
はあああああああ?
意味わかんないんですけど。
なんでキス……って混乱していたら、口をこじ開けられて。舌を吸われて、弱いところを攻められた。
あ。もうだめ。
魔王に逆らえない状態に入った。
やばい。
キスだけなのにホントにやばい。
志信のテクには心までねじ伏せられる。
骨抜きになったおれは、志信に担がれて部屋に連れ込まれた。
ジャケットを脱がされて、ベッドに転がされる。おれのネクタイを緩めながら、志信も器用にジャケットを脱ぐ。真新しい折り目のついた白いワイシャツが現れて、罪悪感を煽るような色気にひどく興奮させられる。
自分の襟元を緩めた大きな手が、おれの頬に落ちてきて。指先でくすぐるように撫でてから、またキスをよこす。
キスに酔わされて、状況把握が追い付かなくて。不意におとずれた乳首の快感に身震いした。
「ん…ん、んぅ……」
快楽に喉を鳴らしても、声が洩れないほど密着した唇が、おれの弱いところを刺激して。おれは抗えないまま志信の手の中に落ちてゆく。
気が付くと最後の一枚を脱がされて、目の前の志信まで裸になっていた。
「これは一度煮沸したし。アルコールで消毒したから、すぐに挿れられる」
アルコールを含んだコットンで棒を拭ってから、志信は完勃ちしたおれの竿を握って尿道の先にゼリーを垂らす。
ひんやりと冷たい感触が不埒な興奮を煽る。
志信は、おれの顔を見て、おれの決意を確認した。
「いいな?」
「うん」
初めは一番細いブジーを手にした。
先端からゆっくりと挿入されて、異物感はあるけど痛みはない。
ゆっくり抜き差しするうちに、志信が体を重ねてきておれを抱きしめた。
尿道を擦られる感覚は続いている。
慰めをくれるみたいなキスをされて、尿道を弄られて。
だんだん妙な気分になってくる。
内側からの僅かな刺激が、かえってじれったい。
「大丈夫みたいだな」
志信はキスを離して、おれの顔を見てからブジーを抜いた。
これで終わり? って思ったら、今度は少し大きめのものを手にして、もう一度ゼリーを垂らしてから挿入した。
製品の質がいいのか、金属の棒は滑らかに研磨されているようで、少し圧迫感を感じる程度で痛みはない。
銀色の細い棒が抜き差しされているのを見ても、いつのまにか緊張はなくなっていた。
また抱き寄せられて。
尿道を刺激され続けて。
頬に、首に、順にキスを落としていた志信は、胸にたどり着いたキスで乳首を吸って、舌で擦って刺激した。
なんだか気持ちまでがくすぐったくて混乱する。
これってなんなんだよ。
商品のテストなんだから、こんなことまでしなくてもいいんだ。
まるで、本当にプレイしているみたいな。
いや。
プレイっていうより、愛されてるみたいな感じがたまらなく甘ったるい。
性器が中から撫でられているみたいで、まるで愛撫だ。
なんていうか、射精している最中の感触に似ていて。中を動き続ける感覚は気持ちいいの一言でしか言い表せない。
尿道ってこんなに気持ちいいの?
おれはMじゃないけど、新境地開拓したみたいな気分でちょっと興奮しているかも。
おれは志信の肩に抱きついて、気が付いたら甘えていた。
「う…んぅ、志信」
「ん? 痛いか?」
おれの髪を撫でて、目を細めておれを見つめる視線が熱くて、快感が入り混じって背中がゾクゾクする。
「気持ちいい……」
「本当に?」
「うん。志信だから……気持ちいい」
特営のエリートだからテクは最高。
だけど、おれの気持ちが志信を受け入れていないと、こんなふうに感じる事なんて出来ないんじゃないかなって思う。
誰よりも安心できて、全てを任せられる。
そんな気持ちに酔っていたら、入っていたブジーを抜いて志信の体が離れてしまった。
どうしたんだって思ったら、さらに太いブジーを手にしていた志信が見えて、まさかそれを挿れるのって思ったら少し腰が引けた。
「大丈夫。少しずつ拓いているから……痛くなかっただろ?」
「ん……でも」
気持ちまで引いてしまったおれを諭すように、志信はおれを抱き寄せた。
「もっとよくしてやる」
志信は、ひとを惑わせるような艶っぽい笑顔でおれを誘惑する。
仕事だ。
これは仕事。
自分に言い聞かせて雰囲気にのまれないようにしていると、不意にアナルがひやりとした。
ぬるぬると滑る指先がそこを撫でて、やがてローションとアナルスティックを挿れられて、少しずつ太いものに替えられて。
そのうちに緩くなったおれの括約筋は、志信の熱くなったものを受け入れた。
冷静に対応……と思っていたけれど、おれの努力は空しい。すぐに気持ちよくなって自制出来なくなってしまう。
信じられないほど硬くなった志信のそれは、おれを中から熱くする。迷いなく奥まで挿れられて、体内の快楽を刺激するそれに、おれは腰を捩って応えていた。
「志信……し…の、ぶ」
途端に涙目になったのが分かる。
何だかわからないけど、腹の中全体が痺れてきた。
「渚、可愛い」
志信は、おれをいたぶるように腰を密着させて、奥まで拓いて捏ね回す。
奥の快楽を知っているおれにはたまらなくて、可愛がってもらっているって思っただけで、先走りがあふれてきた。
それは、先から糸を引くように零れ落ちて腹を濡らす。
「いやらしいな、渚は」
「や……そんな、こと」
「挿れられただけでこんなに濡れて」
志信の指先が、おれの腹の上の粘りを掻き回す。それすら辛いくらいの刺激になって、変な声が出た。
「んぁっ…って、志信が」
「おれが……なに?」
少しだけ意地悪な顔をして、わざと奥まで突いてくる。
ゆっくりと深く出し入れされて、快感のあまりおかしくなってしまいそうだ。
「や、あ、あ、…ん、んぅ……しのぶぅ」
「挿れるぞ」
もうとっくに入っているのに何言ってるんだろうって思ったら、さっきの太いブジーを挿れられた。
ゆっくり、じっくりと、尿道の内側を擦るようにじわじわと奥に挿入ってゆく。痛みはないけれど、変な感じだ。
興奮しすぎて、何が何だかわからなくなってゆく。
尿道にブジーが入ったまま奥まで掻き回されて、前立腺のあたりがコリコリと刺激される。
ブジーの膨らんだ部分が前立腺に囲まれた部分にあるみたいで、中から押されると絶対に抗えない強烈な快感に襲われる。ひどく興奮させられて、理性なんて崩壊してしまって、あらぬ状態で叫びまくっていた。
「志信! や、ああぁぁぁ……ダメ、だめぇっ!」
恥ずかしがるような理性なんて残っていない。脳の奥底から野獣の本能が剥き出しになったみたいで。おれはただひたすら快楽を追って、その頂上を越える事に夢中になっていた。
ブジーを出し入れされて中を擦られて、射精しているような感覚を与えられる。志信は、おれの尻に密着したまま腹ん中を捏ね回して、ブジーごと尿道を圧迫した。
「ひっ……あ、あ、やっ」
途端に全身が緊張して、意思に関係なく快楽中枢が暴走を始めた。行き過ぎた快楽がおれの身体を支配して、爆発的な興奮に投げ入れようとする。
「渚……いけよ。気持いいだろ?」
志信の誘惑がおれの理性の箍を毟り取る。
前立腺だけじゃなくてその奥までぐいぐいと擦って押されて、おれは呆気なくいかされて、何もかも手放した。
「いく……いくうぅぅぅ!」
骨盤の中に凝縮していた快楽の塊が、一瞬で弾けて全身を貫いて四散する。止めようのない大きな痙攣がおれを支配して、それまで尿道を塞いでいたブジーが抜き取られた。
どくん……と尿道に溜まっていたものが押し流されて、ブジーに続いて体外に噴き出す。
「あああぁぁぁぁぁぁぁ……」
理性のかけらもないような、まるでケダモノの咆哮。
おれは射精しながら、さらに腹の中から全身を揺さぶられて叫び続けた。
「いいか?」
「いい…いい!……志信!しのぶっ」
無我夢中で抱きついて、志信から与えられる快楽に縋って、ドロドロと長引く射精に何もかも壊される。
それは、信じられないほどの幸福感で満たされた瞬間で。志信がおれの中でいったのが分かった。
それすらも嬉しくて。
おれは、その一体感に酔いしれた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!