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清流に棲む魚
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 店を出ると、深夜も近いというのに、すすきのの街は相変わらずの賑いを見せている。
 明日からは週末の二連休。そんな解放感が行き交う人々の表情から伺えた。

「明日は休みか?」

 通りに出た須田は曽我に尋ねた。
 彼もまた、週末の解放感を満喫していた。

「うん。昨日産泊だったんで……」

「じゃあ、もう一軒付き合ってくれ。久しぶりだし、ゆっくりしたい」

「いいね」

 ふたりは仲むつまじく肩を並べて歩き出した。通りすがりに看護師に拉致されそうになっている緒方を見つけて須田が声をかけた。

「やあ、緒方くん。モテてるね」

「須田先生!」

 緒方は縋るような視線で返してきた。

「来るかい?」

 蠱惑的な笑顔で誘惑する。
 女性よりも須田の誘いのほうが彼には強力だったようで、緒方は看護師の手から逃げるようにして須田のもとに駆け寄って来た。

「あーっ!須田先生ズルイ!」

 看護師が抗議すると、須田はにっこり笑って彼女に返した。

「男には男の楽しみがあるんだよ。君たちには篠田くんを捧げるから好きにしてくれたまえ」

 須田の言葉に曽我が失笑した。

「なんですかそれ。人質みたいじゃないですか」

 篠田が内心嬉しいのを隠して須田に突っかかる。看護師は男の楽しみを察して顔をしかめた。

「キャバクラですか?」

 安直な発想に須田と曽我はクスクス笑いながら、彼女たちと分かれて夜の繁華街へと消えていった。

「ほんとに、キャバクラに行くんですか?」

 道すがら緒方が困惑顔で尋ねてきた。

「まさか。そんなトコに行くわけないでしょう。ちゃんとした紳士の社交場だよ」

 須田が苦笑して返す。

「……でも、良かったのか?同年代の女性と付き合うのも社会勉強のひとつだよ。彼女たちだってちゃんと分別はあるから、ひどいことはしないと思うけどね」

 曽我が諭すと、緒方は諦めたような表情で答えた。

「女の人の移り香なんて残して帰ったら、それこそ酷い目に遭いますよ」

「なに?一緒に暮らしているの?」

「違いますよ!」

 緒方は慌てて否定した。

「帰りに、家に行く約束しているだけです」

 緒方の恋人が、時々病院に患者を搬送してくる救急隊員である事を知っているふたりには、緒方は安心して事実を包み隠す事をしない。

 須田はニヤリと笑った。



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