Dear heart めぐりあい6 当直の夜は長い。 たったひとりで過ごす広い事務室は、当初はなんとなく怖かった。 病院にまつわる怪談の数々は知っているが、そんな事が怖い訳ではない。 どんな患者がやって来るのか。 自分ひとりで対応が出来るのか。 そんな不安が常につきまとって、外線電話が掛かってくるのが怖かった。 今でもそれは変わらない。 また、電話のベルが鳴った。 全くの不意打ちは心臓に悪い。 緒方は全身に動悸を抱えながら受話器を取った。 「はい。渓和会札幌病院、夜間当直です」 緊張して取った電話は、また救急患者からのものだった。 [*前へ][次へ#] |