Dear heart めぐりあい4 事務室の奥にあるカルテ庫から、コード照合をしたカルテを取り出して、救急処置室に搬送した。 処置室には、市村が施した各種モニターのシグナル音が無機質に響いている。 「カルテ、カウンターに置いていきます」 「ありがとう」 中から市村の声が返ってきた。 (──頑張って下さい) 心の中で声援を送って、緒方は救急外来を後にした。 廊下で、救急外来に向かう当直医とすれ違った。 真っ白い少しだけシワがついた診療衣をひらめかせて、足早に通り過ぎる。 ――今夜も病院は眠らない そんなドキュメント番組のフレーズが緒方の頭に過った。 しかし、病院が眠らない訳ではない。 皆が夜になってもおとなしく家で眠らないから、自分たちもそれに付き合わされるだけなのだ。 皆が健全に過ごしていたら、病人や怪我人はもっと減るに違いない。 緒方はそんな事を考えながら、諦めにも似た心境で事務室に戻って行った。 [*前へ][次へ#] |