Dear heart 友情の限界 愛情の証明 3 「ひでぇ……。俺の事、全然好きじゃないんだろ!?単にやりたいだけじゃねーか!!」 緒方の暴言を浴びせられて、日比野は愛撫を中断して本気で怒り出した。 「──かやろう。好きだから……。おまえもその気になってるのが分かるから、止まんねぇんだろーがっっ!!」 日比野の勢いに圧倒されて、緒方は表情すら固まって、身動きひとつ出来なくなった。 「5年分だ。黙って善がってろ!」 真剣にそんな事を言われて抑制されては、後はもう何も言えなくなる。 緒方は、不安げな切ない視線で日比野に訊ねた。 「──黙って善がっていれば、優しくしてくれんのか?」 今にも不安に押し潰されそうな、あえかな緒方の様子が、日比野の愛情と官能を強烈に揺さぶった。 「俺の言う事さえ素直に聞いていれば……これ以上ないくらい優しくしてやる」 日比野は抱きしめてキスで応えた。 息も出来ないほどの情熱的なキスに溺れさせられて、緒方は日比野に征服されてゆく。 「余計な事は考えるな。おまえは、俺の事だけ見てりゃいいんだ」 ゲレンデで出会った彼女と、自分が割り込めないムードが出来上がっていて、面白くなかった。 キスシーンを目撃して、嫉妬で理性を失ってしまいそうだった。 傍に居るだけでいいなんて、今となっては単なる綺麗事だ。 奥底に澱んでいた独占欲が表に湧き出てきて、日比野は自分の感情を抑制出来なくなっていた。 「──さっさと俺のせいで壊れちまえ!」 緒方の全てを手に入れたい。心も身体も彼の将来も。 最初から『好きだから一緒に居たい』などという友情ごっこを求めていた訳ではない。 緒方に欲情して、緒方に独占欲を抱いている今の自分は、緒方が自分に恋していると知ってしまった以上、あらゆる欲望に歯止めが効かなくなってしまった。 日比野は思わず緒方を掻き抱いた。 「愛してんだよ!……畜生」 ありったけの情を注いで、縋るように抱きついてきた日比野に、緒方は茫然としたままで何も返せなかった。 自分たちの在り方が、あまりにも普通とは違いすぎて、意識的に否定してきた。 日比野が離れてしまうと寂しい。 日比野に抱かれるのが心地好くて安心する。 キスも、日比野でなければ感じたりしない。 独り寝の夜にサイレンを聞くと、条件反射のように甘い感情を誘われて眠れなくなるのも、日比野に恋している証拠だと今なら思える。 緒方は、自分の真実を認めざるを得なかった。 「俺も……おまえだけでいい。おまえが傍に居て、全てをくれるのなら、後は何もいらない」 「緒方……」 日比野は、今にも泣き出してしまいそうな程の喜びをたたえた表情で緒方を見つめ返した。 あふれる感情によって衝動が加速度的に高まる。 息が出来ないほどのキスを贈る日比野の下で、緒方は求められる快感に酔いしれた。 「──ずっと好きだった。……今は、愛してる」 ささやきの後で、ふたたび愛撫する指先が、そっと緒方の中に侵入してきた。 快感など初めから感じるはずもなく、ただ、されるがままの緒方だったが、日比野にはその変化が伝わっていた。 抵抗が無くなって、軟らかく伸展しつつあるそこから、さらに日比野を受け入れようと努力する緒方の意志が窺える。 日比野は、その覚悟が愛しくて堪らない感情を押さえられず、緒方をしっかりと抱き寄せた。 やがて、十分に拓かれた緒方の身体を抱き上げて、日比野は自分の膝を跨がせるように座らせた。 「来い」 「俺が?」 「この方が負担が少ない」 対面する日比野は、緒方に自分で挿れるように指示する。 日比野の熱い上反りが緒方の中心を圧迫して、中に入り込もうとしているのが分かる。 緒方は躊躇した。 なかなか膝を折らない緒方の背中を抱いて、日比野は決して焦らせる事なく待ち続けた。 キスを繰り返して、ささやきで緊張を解かす。 蕩けそうな緒方自身への愛撫が不意に力を失わせて、緒方は日比野の膝の上に身体を落とした。 灼熱の先端が触れて我に返る緒方だったが、悦びを隠せない日比野の表情に誘われて、躊躇いを封じてそっとそのまま肌を合わせるように身体を沈めていった。 濡れて充分に伸展したそこでも、初めて貫かれる恐怖感に緒方の表情が強張る。日比野は、その両頬を手のひらに包んで、緒方の不安を拭うように暖かいぬくもりを贈った。 くちづけを交わして、深く舌を絡め取る。 吸い上げて撫で上げるうちに、陶酔して緊張が緩んだ緒方の体温が日比野の膝に届いた。 穿たれた痛みと、例えようのない充実感に包まれて、緒方はキスから離れた唇から、甘く切ない悦びの声を洩らす。 日比野もまた、深く切なく息を吐いて、緒方の中の熱を味わっていた。 熱い体内の脈動が伝わってきて、緒方の命を実感する。 こうして存在するふたりの奇跡に感謝する。 日比野は、縋る緒方を抱きしめて、泣きたくなるほどの歓びを感じていた。 抱き合っているだけで、充分に身体が悦びに満たされている。 緒方の不随意な筋反射が、時折日比野を締め付けて、それだけで達してしまいそうになる。 日比野は本当に、これだけでもう満足だった。 「日比野……」 肩に縋る緒方が、甘えるように日比野を呼ぶ。 その表情は官能に溺れて潤んでいた。 決して焦らずに、負担をかけないように、日比野はただゆっくりと緒方の肌を撫でてキスを贈った。 時折締め付ける緒方の圧は切なくて、迂闊に突き上げてしまいそうになる衝動を自制する。 徐々に高められる興奮に喘ぐ緒方は、身体を小さく戦慄かせながら当惑を伝えてきた。 「──変だ……俺」 疼きに焦れて刺激をせがむ緒方は、極上の官能を与えてくれる。 そんな自覚は緒方には微塵もなかったが、緒方の端整な顔が快楽に歪んでゆく様は凄艶で、日比野の情欲をさらに駆り立てた。 「あっ……日比野」 日比野が挿入っているだけで、その僅かな動きだけでも緒方の全身は狂おしい疼きに見舞われる。 緒方の様に煽られて、ヒクリと緊張する日比野の熱塊の動きにすら、緒方は上り詰めそうになって混乱した。 「──っあ……ぁ……」 初めて感じる蕩けそうな四肢の疼きが、中心をめがけて集まってくる。 正体の判らない感覚を、緒方は不安と期待を持って導いた。 堪らない快感に、思わず腰が揺れる。 「日比野………日比野ぉっっ」 きつく抱きしめて、緒方は日比野に縋る。 「──あ……やだ!……やっ!?ああっっ!!」 両手の指先が日比野の肩に食い込み、腕が緊張して喉元を反らすようにして緒方は空を仰いだ。 絶頂を伝える叫びが、涙と共にあふれて止まらない。 「緒方……おまえ」 理由の判らない凄絶な自己の反応に混乱しながらも、その快楽に引き摺られる緒方を見て、日比野は感嘆した。 「すげぇ……達けるんだ」 歓びにあふれて、緒方の体内をなぶるように日比野は自身を蠢かす。 与えられる刺激に、弾けるように反応する快楽の連鎖は止まらない。 何度も波のように襲い来る嵐のような絶頂に、緒方はただ翻弄されて歯止めが利かない淫欲に呑まれていた。 精を吐き出す事のない官能は終わりがなくて、辛いほどの焦燥感に涙が止まらない。 「ぅわ……エロ……」 堪らなくなった日比野は、狂おしく乱れる緒方を抱き寄せて、シーツに組み臥した。 自分がどうしてしまったのか分からない。 強烈な体験に動揺を隠せず、緒方は頼りない視線を日比野に向けた。 日比野は、緒方の乱れた前髪を撫で上げて、蠱惑的な笑みでさらに緒方を惑わせた。 「いいか?緒方……」 訊ねる日比野に、緒方は言葉にならない切望するような視線で応えた。 燃えるような熱い身体を重ねて、日比野の滾りが迷いなく緒方を貫く。 それが緒方の凝りを刺激して、ふたたび嵐のような愉悦に堕とされた。 [*前へ][次へ#] |