コンサルタント
夏宵花火 4
「本当にきれいに見えるね。最高のロケーションだ」
曽我は、目の前で繰り広げられる光と音の祭典に心を奪われて。
常に恋人として意識してきたはずの百瀬に対して、緊張を緩めていた。
心身ともに無防備な浴衣姿。
慎ましやかで清潔感のある佇まいは、内から滲み出る凄艶な色を隠しもしないで、百瀬の下心を掻き乱す。
「柊司さん」
百瀬はたまらなくなって、背中から曽我を抱きしめた。
「──智?」
突然どうしたのかと思う。
いつも百瀬と触れ合いたいと思う、自分の感情を知られてしまったのか?
曽我は、心の奥底で動揺していた。
「少し……こうしていさせてください」
熱い囁きが耳許をくすぐって、曽我をゾクリ……と感じさせる。
「外から見えるよ」
平静を装って百瀬の行動を咎めるが、百瀬はそんな事では怯まない。
「ここは高すぎて、周りからは見えませんよ」
百瀬もう、周囲への警戒を手放して。
遠慮なく曽我に触れていた。
ふんわりと背中から抱き寄せて、うなじに鼻先を埋めて曽我の香りを堪能する。
すると、途端に不満そうな表情を浮かべて、曽我をさらに強く抱きしめた。
「──シャワー浴びてきましたね?」
意外な指摘を、曽我は何事かと思う。
「仕事帰りだから。……汗かいたまま浴衣は着たくないよ」
曽我は当たり前の事を当たり前に答えた。
「……あなたは分かってない」
百瀬は落胆したように、深い、深いため息をつく。
「自分は柊司さんの匂いが好きなんです。……しかも『sea breeze 』なんて、爽やかすぎて台無しじゃないですか」
「智……?」
突然拗ねる百瀬の理屈が理解できない。
曽我はなんの反応も見せられなかった。
「あなたのせっかくの甘い香りが……。ただでさえあなたは匂いが薄いんですから、消さないで下さいよ……」
耳朶を唇で挟まれて、舌先でくすぐられた。
「あ!?……智!」
咎めるように口では抵抗を示すも、実際の曽我はされるがままだった。
「花火……」
折しも、一回目の赤いスターマインが華やかに夜空を飾り、迫力ある爆音がビルの谷間にこだましている。
「あなたも楽しんでください。自分も、あなたを楽しみながら見ますから……花火」
そんな不埒な事を告げられて、予告もなく強引に袷から手を差し入れられ、胸を摘ままれた。
「──あっっ!?」
思わず声を洩らすと、百瀬が咎める。
「声は出さない方がいいですよ?見えなくても、上の階も下の階もベランダに人が出ていますから……」
「じゃあ……止めたらどうだ?」
息も絶え絶えに訴える。
「嫌です」
いつになく強引な百瀬は聞く耳を持たない。
曽我の袷を剥いで、上半身をはだけさせて、剥き出しの肩を吸う。
チクリと刺すような痛みが逆に曽我の興奮を呼んだ。
曽我は煽られるまま、百瀬の手に落ちてしまった。
「──と……も」
咎めているようで、誘いもする。
そんな裏腹な欲を知る百瀬の愛撫に酔わされて、曽我は立っていることさえままならない。
「ちゃんと柵に掴まってて」
百瀬は、曽我の浴衣の裾から手を忍ばせて、下着の上から熱が籠る徴に触れた。
そこはすでにしっとりと兆しを見せていて、熱い脈が集中している。
「あ……智………っや」
荒ぐ息遣いが曽我の高揚と従順を示す。
「これじゃ……見ていられない」
百瀬の愛撫に集中したい曽我は、切なく訴える。
「目に焼き付けていればいいんです。目を開けて……前を見て」
やんわりと撫でていた手が、下着の中に忍んできて、曽我の腫れたグランスを指先でなぞる。
「………っっ!!」
曽我の腰が引けて、百瀬の中心を圧した。
そこは、すっかり硬くなっていて、押し付けられた曽我の臀部を押し返すように、百瀬は意識的にヒクリと動かしてみせた。
百瀬の欲を見せ付けられて、曽我はたまらない。
尺玉が昇り笛を鳴らしながら漆黒の空に舞い上がり、辺りを揺るがす爆音と共に光を放った。
目の前に咲いた大きな赤い花火は、百瀬の灼熱と共に深く曽我の心に焼き付いた。
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