[携帯モード] [URL送信]

コンサルタント
HANABI 7





「自分は……将来的には、ビジネスの海外留学も考えています」

百瀬のビジョンを聞かされて、曽我の胸が不意に痛んだ。

自分はまた、ひとりになってしまうのか……と。
百瀬と離れる事が寂しい。

百瀬はそんな曽我の表情に絆されて、真正面から曽我を口説きにかかった。

性急かもしれない。
それでも、百瀬は約束が欲しかった。

「──その時は一緒に来てくれませんか?あなたとの遠恋なんて、ストレスで胃に穴が開いてしまいそうです。勉強どころじゃありません」

そんなにストレスなのか?

曽我はオーバーだと思う。

しかし、百瀬は大真面目だ。

寂しい寂しいと泣くこのウサギみたいな存在を、独りで置いていけるわけがない。
たちの悪い野良犬に噛まれでもしたら一大事だ。
心配で心配で、毛根まで死滅してしまいそうだ。

「あなたには、おれの傍にいて欲しい」

求められていながら、曽我は迷った。

「そんな、何年も先の約束なんて……。それに、おれは医師としての務めがあるし」

本心は離れたくない。
しかし、展望も目的もなく、百瀬に付いていく事だけが目的だなんて、男として情けなさ過ぎる。

曽我は即答出来なかった。

「スタンフォードなら、ビジネスも、医学も学べます」

サラリと言ってのける百瀬を見て、その剛の精神に感心した。

「大きく出たね」

曽我は笑った。

いずれは、企業の中核を担う立場の男との付き合いなんて、色んな意味で荷が重すぎる。

本気になってから、そんな重大な情報をもたらされても、もう逃げようがない。

曽我は覚悟を決めた。

まずは五年。
死ぬほど勉強していかないと、百瀬が目指す大学の修士課程で自分はやっていけそうもない。

一生この調子か……と思うと、余計なことで悩んでいる暇もないんだな……と、これからの在り方を予感させられた。

「そんな先の約束など………現実的じゃない」

上辺ではそう言いつつ、曽我の表情は緩んでいた。
百瀬と共に歩く、人生の新たな目標が嬉しかった。

そんな曽我の無言の承諾を察して、百瀬は歓びに満たされた。



[*前へ][次へ#]

8/9ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!