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コンサルタント
交歓3





代行タクシーを呼んで、百瀬の自宅へと向かった。

百瀬が告げた行き先は中央区の南。
豊平川の川沿いに当たる住所だった。

そこは高名な観光ホテルが居並ぶ区域で、そんなところに住宅街なんてあっただろうか……と考えながら車窓から外を眺めていた曽我は、タクシーが中島公園の脇道を走っている事に気付いた。

百瀬はさっきから曽我の手を握って離さないでいる。

指を絡めて、決して離される事がないように、と願っているかのようで。
手のひらの熱は、百瀬の感情の高揚を伝えてきた。

やがて、目的の住所でタクシーを降りて、やっと自宅まで念願の曽我を連れ帰る事が出来た百瀬は、幸せそうな笑顔を見せて改めて曽我に手を差し伸べた。

「──こっちです」

百瀬は返された曽我の手を握って、エントランスの奥へと進んだ。
手を引かれながら、曽我は何となくしっくりこないまま後を歩く。

「ご家族は?」

「東京です……どうして?」

「ああ……独り暮らし?」

曽我の質問に、百瀬は嬉しそうに笑って答えた。

「うん。念願の独り暮らし」

その答えは、曽我の疑問を大きく育てた。

「そうか。……そうだったね」

釈然としない曽我の思いは当然と言えた。

広い豪奢な2層吹き抜けのエントランスホール。
面談可能な応接セットや来訪者を迎える観葉植物。
中庭らしい空間には、人工の滝が流れていて。
その隣には多目的スペースが設置されている。

百瀬はその先にあるエレベーターホールへと向かう。

エレベーターの現在位置は24階を示していた。
一体、何階建てのビルなんだ……と、圧倒された曽我は、改めて百瀬に確認した。

「ここは分譲マンションだよね」

「うん」

「どうして……。こんな所に、独り暮らし出来るのかな」

「──え?」

百瀬が、後ろ向きな声質に気付いて曽我を見つめると、エレベーターが到着した。
軽快なシグナルが鳴ってから、ドアが左右に開いてふたりを招く。

「どうしたの?」

エレベーターに乗り込んでから、百瀬は曽我の様子が気になって訊ねた。
何かまた善からぬ方向に思考がズレているのかと思う。

「いや……」

百瀬が押した27のナンバーボタン。
それはこれからの行き先を示す。

27階。

それはあらゆる意味に於いて途方もない数字だ。

札幌は他の都市と比較しても物件価格が低い。
しかし、およそ製薬の営業としての年収をはるかに上回るであろう価格の乗用車と。
多分、その乗用車の10倍はするであろう不動産を百瀬が所有するのは不自然だ。

曽我は、言い知れない不穏な感情に襲われた。

「きみは………」

曽我は改めて隣に立つ百瀬を見つめた。

「……何者?」



猜疑心を向けられた百瀬は、それまでの穏やかだった微笑みを、全く表情のない仮面のような顔に色を変えて曽我を見下ろした。



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