聖戦の礎 ―締結編― (完結)
聖戦の礎
惑星HEAVEN。
三つの衛星を従え、赤道を中心に四つの大陸を有し。広い海洋と淡水の河川が、豊かな生態系を作りあげている。
青く輝く、水と緑の美しい惑星。地球圏の知的生命体にとっての第二の故郷。
大陸の東の果ての湿地帯には、どこまでも深く澄んだ泉がある。
そこは母の胎内にも似て、孤独にさまよう魂を引き寄せ、記憶を呼び覚まし、ふたたびこの地へ生み出すという。
湿地帯にある泉の凍て付くような冷たい水面に、銀青色の長い髪が藻のようにゆったりとゆらいでいた。
白く透けるような肌は、緑青色の水の中で、蒼い月明かりに照らされて輝いている。
やがて、それは突然起こった急流に引き込まれ、ふたたび水中に沈んでゆく。
その後、人影がゆらめくように現れては、水面に浮かび上がる前に消えてゆく事がふたたび。
泉は、何事もなかったかのように、水面をただ揺らしている。
風の流れも、木々のざわめきもない静かな暗闇。
冴え冴えと夜を照らす月明かりだけが水面に残り、それは小さく震えるように蠢いていた。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!