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相応しい男
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 航空力学、飛行理論、果てはパワードスーツのメカニズムまでの専門的な講義を本部から依頼されて、ひとりの教官がやってきた。
 フェニックス代表の三名は驚いて彼を迎えた。
 彼は、連邦軍に在籍中、杉崎隊長の後任としてフェニックス戦闘機隊の隊長に就いていた小松原大尉その人だった。
 四年前、HEAVENに転生してから軍の研究施設への転属を希望し、開発局に移動してガイアスの設計に携わった。その後もガーディアンを設計し、軍総帥のお抱え技師として活躍している。
「やあ。元気だった?」
 変わらない懐かしい笑顔は、三人にとって最高の陣中見舞いだった。
「みんな、なんだかずいぶんたくましくなったね」
 小松原は嬉しそうに三人を見て驚きを伝える。
 ずっと研究室に籠もりきりだった彼に比べて、彼等はこの訓練中に確かにたくましく成長していた。
「杉崎さん。喜ぶよ、きっと」
 フェニックス艦長が、彼等を可愛がっている事を良く知っている彼もまた、彼等の成長は嬉しい。
 二日間の講義で理論を詰め込まれた訓練兵たちは、シミュレーションの後、実際の飛行訓練に入った。
 今はもう、テストパイロットとしてしかコックピットには縁がないと謙遜する小松原のフライトテクニックは、本人の言葉に反して健在だった。
 受講者たちの中で戦闘機に搭乗経験がある者は皆無に等しい。そんな中、橘だけは生き生きと飛行訓練を受けていた。
 熟練した小松原の指導の成果でもあるが、実際、大型クルーザー以上の船舶の操縦しか経験していない橘でも空を飛ぶのは楽しかった。
 Gによる循環の変化にも対応し得る筋力を身につけてしまった彼にとって、計器の理解とラダーのニュアンスさえつかんでしまえば、自在に操れる戦闘機は大型船よりもはるかに面白味がある。
 それまで、自分たちよりひ弱に見えた橘の、空での実力を知った訓練兵たちは、ドッグファイトで完膚無きまで叩き墜とされた事を機に、橘への余計な干渉をすっかり控えてしまった。
「──すごいな橘。おまえならすぐ隊長クラスの実力が着きそうだ。前線でも十分に通用するのに……なんだか残念だな」
 講習を終えて島を去る小松原は、そんな言葉を残して行った。
 そのときの橘は嬉しさが先立って、その深い意味を考えもしなかった。





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