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氷雪の陣
逆襲13





 要塞の通路を中央に向かって走っていた三台のカートが、突然のルートの遮断によって急停車を余儀なくされた。車体が横滑りを起こして、互いに接触しながら、降りてきた隔壁の寸前で衝突を免れた。
「いきなりなんやねん!?」
 カートの後部座席にいた一条は、運転席に乗り出して咬みついた。
 意気揚々とした前進をなぜ止めたのか納得がいかない。
「隔壁があって進めません」
「つか、隔壁が降りて来て……」
 運転席と助手席にいたふたりが状況を伝えると、カートを挟み込むように後方の隔壁まで降りて来た。
「――閉じ込められたみたいっスね」
 助手席の兵の顔は緊張で強張る。
「どアホ! こんなんでどないせぇっちゅうんじゃ!!」
 一条はカートから降りて、行先を塞ぐ隔壁を拳で叩いた。
「……ったく。あほんだら!!」
 隔壁を操作して来たのは中枢の司令室だろう。そのシステムは鉄壁のセキュリティで、短時間での攻略は不可能だった。
 自分たちの侵入を阻止しようと当然ながら敵も巧妙に動いている。
 叩いた厚い鋼鉄製の隔壁からは、鈍い音が返ってきた。これを破壊するには相当量の火薬が必要だ。
 しかし、そんな大規模な爆破を試みたとして、隔壁に囲まれたこの狭い空間では仕掛けた自分たちもろとも破壊される。
 このどうにもならない八方塞がりの状態を、なんとかしなければならないと一条は思案した。
 とはいえ、外部からの救助以外に策などがあるわけもなく、救助を待つしかなかった。
 それでも一体どれだけの時間を消費するのか。そう考えると苦々しい感情に落ちてゆく。
 兵のひとりが救助を要請し始めた。全員の通信機も開放する。
「くそ……カッコつかへんわホンマ。こんなんありか」
 勇んで突入したのにこの有り様だ。
 一条はイライラしながらインカムに返信が入るのを待った。
「だぁ――っっ!! イライラする! 正義の味方はおらんのかいっっ!!」
 苛立ちが爆発して一条が叫ぶと、突然ヘッドセットに艶のある女の声が応えてきた。
『いるわよ。あなたの傍に』
「なんや?」
 隔壁の中の男たちは、緊迫したムードを一変させる突然の色香に茫然とした。
『――隔壁から離れて伏せなさい。いま出してあげるわ』
 何がなんだかよく分からないが、下半身から力が抜けるような声に促されて、彼らは指示されるままカートの間に身を伏せて待機した。
「早く出させてん♪」
 兵のひとりがニヤニヤ笑いながら小さく腰を振って待ちわびる。
『せっかちね……ボーヤ』
 声がさらに情欲を煽るような事を言ってのける。
 一条は屈強な海兵隊の、女の色香に対しての弱さに呆れた。
 次の瞬間、突然の爆風と粉塵が彼らを襲った。
 隔壁に視線を移すと、爆破された部分が鈍い金属音をあげて、パワードスーツのビームサーベルによってさらに切り開かれていく。
 開かれた隔壁から、味方のパイロットが姿を現した。
「一条艦長、無事ですか?」
 男たちの期待を裏切って、男性パイロットの登場だった。
 彼らのはやる気持ちは一瞬で萎えてしまった。




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あきゅろす。
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