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氷雪の陣
逆襲2





 突然ガーディアンのコックピットにアラートが鳴った。レーダースクリーンに船影が点滅する。
「敵艦捕捉しました。三隻ですね」
 陽本が武蔵坊に確認した。
「確認した数は合っている。旗艦を手に入れたい。あとの二隻は沈めるぞ」
「了解」
 ウィザードとガーディアンの接近を察知したヘルヴェルト艦隊からは、艦載機が発進する。
「大尉、目標は護衛艦の2隻だ。作戦を読まれてはならない。敵機はそこそこ相手をしておけ。味方が到着するまでは全滅させるな。いいな?」
 抑揚のない落ち着いた指示だ。
 ――なんて自信だろう。
 陽本は圧倒された。
 武蔵坊は、戦場での主導権をつかむことが出来ると信じている。
 陽本にはそれが根拠のある自信だと分かっていた。そんな強さが羨ましいと思う。
 自分まで信頼されているようだが、果たしてその信頼に応えるだけの力が自分にあるだろうか。
 陽本にはあまり自信がない。
 この、ガーディアンに振り回されっ放しの状態はあまりにも情けないと自覚している。
「行くぞ、大尉」
「はい。大佐」
 やるしかない。
 陽本は覚悟を決めて艦隊に迫った。
 しかし、単騎で仕掛けたときとは明らかに違う。
 心強い味方が傍にいる安心感を、陽本は懐かしく感じていた。
 不意に、早乙女と組んで飛行した空を思い出した。
 どこまでも青く透明に澄んだ、コックピットから見上げた地球の青空。
 早乙女の機体に反射する陽光。
 今まで、ずっと忘れていたあの暖かさを陽本は思い出した。

 いつのまにか、吹雪がやんでいた。
 厚い雲の裂け目から、遠い太陽の光が射し込んでくる。
 その陽の光を反射して変形した武蔵坊の機体が、迎えるパワードスーツ群に斬り込んで行く。
 それに機を見た陽本もまた、ガーディアンを変形させた。
 そして、まもなく梵天のチームが到着した。
 ガーディアンに群がる機体をビームで蹴散らして陽本を解放する。
「おまえたち……」
 陽本は助っ人として参上した彼等を迎えて驚きを隠せない。
「ザコは俺らに任せておけ」
「あんたは艦を沈めて来い」
 ガーディアンを守るように抗戦するエルフの機体を、陽本は万感の想いで見つめた。
 心強い味方がここにもいる。
 そう思うだけで胸が熱くなる。
「――済まない。頼んだぞ」
 陽本は彼等にそう言い残して敵艦に向かった。
「水くせえコト言うな」
 パイロットの言葉に陽本は苦笑した。
 今までの自分たちの関係からは想像出来ない言葉だったが、それは何よりも頼もしい。
 陽本は安心して背中を任せられる仲間を得た強さを武器にして、敵艦へと斬り込んで行った。




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