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氷雪の陣
HEAVEN防衛軍哨戒艦艦隊19





 翌日、出港時間が迫ってから、港に面したロビーに哨戒艦艦隊の顔役たちがひしめき合っていた。
 そこからあふれた乗り組員たちは、各艦のモニターに注目していた。
 その映像は遠く採掘工場までケーブルを通じて届いている。
 哨戒艦艦隊筆頭艦長である一条が、艦隊の全乗組員に対して帰還声明を表じていた。
『――我々はこれからHEAVENに帰還する。残念ながら遮那王と梵天王が沈んだため、一時前線から後退することを余儀なくされた。多くの盟友たちの冥福を祈るとともに、我々は彼等の魂に誓おう』
 乗組員たちは戦死した仲間たちに想いを馳せた。長きにわたってともに戦って来た戦友を失った悲しみが、より強い戦意と団結を生み出す。
『哨戒艦艦隊は必ずよみがえり、より強く、より大きく生まれ変わる。そして、我が艦隊の誇りをかけて、HEAVEN空域を制覇する』
 一条の宣言で乗組員たちの歓声がわく。
 フェニックスのブリッヂでも、一条の宣言がモニターに映っている。司令席の杉崎は、苦笑しながらそれを眺めていた。
『――制空権は我々哨戒艦艦隊のものだ』
 悲しみを乗り越えてさらに一体感が強まったらしい。杉崎はそう感じていた。
 一条を包む歓声が、口々に一条を称える。
 哨戒艦艦隊に於いてはカリスマのような存在。
 また、やっかいなものに育ったものだと、杉崎は困惑していた。
『HEAVENにむけて発進する。全艦、出港準備にかかれ』
 採掘工場でモニターを見ていた『電気屋』は、涙をためて一条の姿を食い入るように見つめていた。
 一条の指示のもと、次々と乗艦する乗組員を眺めながら、一条は最後にメッセージを残した。
『ジェイルの諸君。我々は、ともに戦った諸君の勇気と友情を忘れない。心から感謝の意を表する。……ありがとう』
 万感の想いを込めた感謝の言葉。それは、皆の心に届いた。
 『電気屋』はその一言に泣かされて、作業長の胸を涙と鼻水でグッショリと濡らした。
 作業長は微笑みを浮かべて、一条の心情を確かに受け止めていた。
 これから『坊さん』にも鎮魂に一役買ってもらおうと思いながら、モニターの中から去って行く一条の背中を見送った。





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