僕の痛みを君は知らない
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驚いた事に、おれの回復は信じられないほど早かった。
創傷や骨折の類いは本当にキレイに早く治る。なのに、銃創だけはいつまでも跡が残って、おれには計二カ所の銃痕が残った。
何度か見舞いに来てくれた慎吾はあのときの襲撃に加わっていたようで、あのときの艦長の怒りの理由を教えてくれた。
パーティー会場からの帰り、駐車場に向かう途中で怪しい黒服集団に拉致されそうになったらしいんだけど。丁度そこに沢口が居合わせて、まだ会場にいたブリッヂの面々を携帯で呼び寄せて撃退したらしい。黒服のひとりを締め上げて情報を吐かせてから、連中の武器満載の車を使って逆襲を仕掛けたってのが真相で。
……ホント、血の気が多いよな。
おれはブラフを掛けるためのスケープゴートだったのに、人質要員の艦長が捕まらなかったから、おれを人質にするしかなかったって……。
結局おれは殺されてもいい役回りだったわけだ。
くそ。
それにしても、力技に任せて襲撃して、人質のおれが殺されるとは思わなかったんだろうか。
そこんトコ、なんとなく不安なんだよな。
はっきり言って、艦長はあのとき怒りで我を忘れていたよ。
まあ、頼もしくはあったけど。
だいたい、パイロットに強化訓練合宿を強いていながら、自分たちはクリスマスパーティーかよ。
……ったく、オペレーターは優雅でいいよな。
それにあの強化訓練は、このおれを事件から遠ざけるためだったって言うんだから驚きだ。
総帥の特権というべきか、横暴というべきか……。
その事件についてははそれっきりで、聖はそのあと何も言わない。
この街でのライブでツアーは終わって、おれの退院日に聖が迎えに来た。
爆破されたマンションに帰るわけもいかず、文字どおり焼き出されたおれは、聖の部屋を借りることになった。
でも、なんとなく気まずい。
あんなコトを口走ってしまった後での、同居生活ってのはどうも居心地が悪いと言うか。
ラリってさんざん絡んだ後では、気まず過ぎるよ。
いろいろ話して欲しいのは確かだけど、ちょっと言いすぎたよなあ。
あ〜あ。
ホント。『あ〜あ』だ。
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