僕の痛みを君は知らない
21
夢なのか。
現実なのか。
とぎれとぎれに現れる映像が、なんなのか分からなくて、それでも悲しい感情だけは現実におれを襲ってくる。
黒木さんが心配そうにおれの顔をのぞきこんでいる。視線を移すと、そこには聖が泣きそうな目でおれを見守っていた。
聖。
おれが死ぬと、悲しい?
聖が何か話しかけてくる。
でも、何を話しているのか分からない。声が聞こえない。
そうか……。
死んでしまうって、こういうことなんだね。
これは今起こっている現実ではなくて、おれの記憶なのかもしれない。
おれはもう、聖の声を聞くことも、姿を見ることも、触れることも出来ないんだ。
なんだか寂しいね。
本当はもっと、ずっと君たちの傍にいたかったのに。
――なんだろう。まぶたが熱い。
変だな。
死んでしまったはずなのに、涙が熱いなんて。
ああ……あたりが暗くなってきた。
またおれは、独りになってしまうんだね。
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