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僕の痛みを君は知らない
20





 そのとき、突然どこからか爆音が響いてきた。
 室内の空気が振動と共に緊張する。
 黒服の男たちは銃を取ってドアの外に向かった。
 遠くで銃が連射される音がする。
 冗談じゃない。また撃ち合いかよ。これ以上タマをくらうのはゴメンだよ。
 うわっ!
 ドアを突き破ってなぎ倒された男が室内に飛びこんできた。つか、明らかに投げ飛ばされてドアに叩きつけられたって感じで飛んできたよ。
 いったい誰だ?
 黒木さんは今頃『地下』にいる。だとしたら、こんな所に誰が襲撃してくるんだ?
 しかも、並みの武装じゃない。近くで爆発が起こっていたから、弾薬まで持参している。
 襲撃者がドアをくぐって室内にねじ込んで来た。
 群がる黒服の男たちを銃と拳でなぎ払う。
 おれはその人を見て唖然とした。
 杉崎艦長?
 どうして艦長がこんなところに?
 それにしても、心底カッカきてるのが明らかにわかる。
 いったい何があったんだろう。
 おれの傍でエラそうに講釈をたれていた男が被弾して斃れた。
 次はおれの番かと身の危険を予感していたら、立川さんが自動小銃を片手に現れて、おれの傍まで走って来た。
「野村。無事か?」
 後ろ手に縛り上げられていたおれの身体を解放して、心配そうに顔を覗き込む。
 うそだろう?
 立川さんまで現れるなんて信じられない。
 こんなときに彼に会ってしまったら、おれは平気じゃいられない。
「立川、さん」
 おれは抱き寄せられて彼の胸に身体を預けた。
 このふたりが救けにきてくれるなんて、思いもよらなかった。
 それにしても、重量級同士の戦いはすごい。いつも理性的な艦長が、こんなに獰猛だとは知らなかった。
 この暴れっぷりは、よっぽどの何かがあったとしか思えない。
「艦長。中尉は」
 ドアからロケットランチャーを担いだ黒木さんがのぞいてきた。
 彼が、来てくれるなんて……。
 男たちを思う存分いたぶった艦長は、荒い息をしながらおれの方を指した。
「貴史!」
 心配そうな顔で、ランチャーを放りだした彼が駆けよって来る。
 もうだめだ。
 いろんな感情があふれ出して、涙がとめられない。
「しっかりしろ!貴史!」
 そうだよね。
 おれ、しっかりしなきゃならないのに。もうだめみたいだ。
 でも、何だか嘘みたいにホッとしている。
 いろんな事が一気に身に降りかかってきて、おれの頭はショート寸前なんだけど、そんなコトはもうどうでもいい。
 たったひとつだけ、確かに分かった事がある。
 こんな目にあっても、おれはやっぱり貴方が好きみたいだ。
 ふたりが来てくれたときよりも、貴方が来てくれたときのほうが嬉しかったなんて。そんなのふたりに失礼だよね。
 でも、ホントに嬉しかったんだ。
 黒木さん。おれ。
 死ぬ前に貴方に逢えてよかった。




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