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僕の痛みを君は知らない
18





 一瞬、なにが起こったのか分からなかった。
 気付いた時にはおれは窓の外を飛んでいて。
 突然の爆音と爆風がおれをベランダの外に吹き飛ばしたのは分かるけれど、何がどうして爆発したのかは分からない。
 幸い着地した場所には新雪が山のように積もっていたので、三階から落下した割りには衝撃は少なかった。
 今年は随分と薄着で外に放り出される。
 ついてない。
 そんなことを考えてから、呑気に構えている場合じゃない事に気付いた。
 思い切り打った左の肩と脚が痛む。
 おれは狙われたんだ。
 ターゲットは黒木さんじゃなかったのか?
 急に寒さと同時に危険を実感して雪山から立ち上がったとき、おれの足元に銃弾が降り注いできた。
 ちょっと待てよ!冗談じゃないぞ!
 おれはなんとかその場から逃げたかった。けれど、身を隠す障害物もない雪原では、残念ながら初志貫徹できずに終わってしまった。
 重く熱い苦痛が背中を貫いて、おれの身体はふたたび雪原にのみこまれた。一瞬の出来事だった。
 雪を踏みしめる音が近づいてくる。それは、複数の人間の足音だ。
 音が耳元で止まった。
 身動きできないおれのシャツをつかんで身体を起こす。まるで獲物を確認するような視線でおれを見るその男は、メイドインHEAVENのライフルを手にしていた。
 こいつら、ヘルヴェルトやクロイツじゃない。身内じゃないか。
「予定変更だ。こいつを使う」
 なにが予定変更だよ。変更しなくていいからおれを解放しろよ。
 なんに使うか知らないけど、使う気があるのならちゃんと手当しろってんだよ。
 こんな苦痛は何度経験しようと慣れるものじゃない。おれは、まだ死にたくないんだ。理由も分からないままターゲットにされて、国家機密か何だか知らないけど、こんなみじめなのはイヤだ。
 おれは狙われてないって言ったじゃないか。
 黒木さんの嘘つき。
 聖のバカヤロウ。
 死んだら毎晩枕元に立ってやるからな!



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