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僕の痛みを君は知らない
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「――タカ、どうしたの?」
 基地の通路で蘭丸とすれ違った。外出のため私服を着ていたおれに、理由を尋ねてくる。
「ちょっと家に行ってくる。欲しい物があるからさ」
 過密訓練も一週間が過ぎて、そろそろ缶詰生活に飽きて来たところだ。
 おれは、音楽のメモリーを調達してきたかった。
「ふーん。デート?」
「違うよ」
 明日はせっかくの休日だというのに、デートの相手もいやしない。黒木さんは、あれから『地下』に籠もりっきりなのか、なんの音沙汰もない。
「蘭丸こそ、隊長はどうした?たまにデートしないのか」
 おれはからかい半分に笑い返した。
 元フェニックス戦闘機隊隊長杉崎少佐。今は空母ギャラクシアで艦長職に就いている。
 彼と蘭丸は結構ふたりつるんでいるらしい。一応蘭丸のパートナーらしき弁慶がジェイルに行ってしまってから、隊長は積極的にアプローチしているようだ。おれとしては、隊長と蘭丸の仲を長いとこ見守って来たんで、そっちでまとまってほしいところだけど。
 実際はどうなのかな。
「もう隊長じゃないって。……艦長は今頃カイン空域で哨戒勤務だ」
 ふーん。デートのところは否定しないわけだ。
 ……で、相手がいないのは蘭丸も同様というわけか。
「明日早く帰ってくるから、気晴らしにどこか行こうか」
「うん、いいね」
 相変わらずの寂しい休日。
 おれたちって、なんとなく境遇が似てる。
 蘭丸は、仕方ないか……とでも言いたそうに笑って応えた。



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