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楽園の紛糾
天使になんてなれない3





 上気して喘ぐ表情がなまめかしい。
 信じたくなかった現実に動揺すら覚えたのか、涙で潤んだ瞳が愛しい。
 聖は、自分もこんなふうに野村を乱してみたいと思い始めた。
「雅……。オレ、タカとしたい」
「だめだ」
「どーして?」
 黒木だけが野村をこんなふうにして狡い。
 聖は不満気な視線で黒木に訴えた。
「まだもう少し拓いてやらなければな……。絶対に傷つけたくないんだ」
 野村を大切にしたい黒木の想いが伝わる。
 聖は自分の腕の中にぐったりと放心して抱かれている野村を見つめた。
「じゃあオレどーすんの?欲求不満だよこれじゃあ」
 聖が抗議すると、室内に非常警報が鳴り響いた。
『──哨戒艦接近。全艦戦闘配置。戦闘機隊はアラート待機。繰り返す……』
 立川の指令が艦内に響く。
 野村はその声に反応して我に返った。
「行かなきゃ……」
 聖の腕を離れ、やっとの事で起き上がってから、ベッドの端から足を降ろして脱がされたユニフォームを身につける。
「無理だよタカ。もう少し休んでから……」
「まさか!そんな訳にはいきません」
 野村の思考は、立川の指令を聞いたときから戦闘機隊隊長に戻っていた。
 しかし、膝に力が入らないため立ち上がった途端にその場に座り込んでしまう。
「あれ?」
 野村は、自分の身体の感覚が掴めない。
 こんな状態は初めてだった。
「大丈夫か?」
 黒木に腕を取られてやっと立ち上がる。
「大丈夫です。……行きます」
 多分腰にも力が入らないのだろう。
 フラフラと壁伝いに歩きながら士官室を出て行った。
「大丈夫かな……。そんなに強烈だったか?」
 黒木は心配そうに見送ってつぶやいた。
「思いっきりイっちゃったんだろ?結構くるぜ、ああいう時は」
「出撃がなければいいんだが」
「何?あいつパイロットなの?」
「ガイアスのな……隊長機だ」
「へえ……」
 会話が途切れてしばらく無言でいたふたりだったが、聖がその沈黙を壊した。
「──責任とれ。おまえは出撃なんてないんだろ」
「ない事はないんだぞ。おまえだって専用機搬入してまでやってきたんだろ?」
「いい、こっちが先だ。こんなにその気にさせられて、中途半端で終われるかよ」
「……痛いだの優しくないだの文句言うくせに」
「この際だ。少しぐらいデカくても我慢してやる」
 高飛車な態度が黒木を不機嫌にさせる。
「容赦しないぞ」
 聖は突然黒木に組み伏せられ慌てふためいた。
「……ちょっと!そんないきなりガバッ……ておまえ。あっ!」
 強引な愛撫にしばらく身を任せてみる。が、やはり気に入らない。
「おいっっ!痛えっつーのっ!ローションくらい使えっっ!」
「そんなもん持っていない」
 聖の動揺にかまう事なく、黒木の指はその身体を広げながら、硬くなった黒木自身も挿入しようとしていた。
「ちょっ、たんま!……オレ持ってるから、ちゃんと使って。お願い。そしたら暴れないから」
 自分を可愛いらしく演出する聖を冷めた目で見下ろして、黒木は一旦聖の身体から離れた。
「どこだ?」
「ブリーフケースん中。内ポケットに……」
 教えられるまま聖のブリーフケースを開けて、中から『ジェルコート0.02』と書かれた包みをひとつ取り出した。正方形の包みの中にはリング状にまとめられた衛生用品が入っている。
 黒木は呆れて聖を見た。
「よう……。おまえ、ここに何しに来たんだ?なんでこんなモン持って乗艦する?」
 ヒラヒラとその小さな包みを振って聖を問い詰める。
「いや……その、非常事態に備えて……」
 ばつが悪そうに苦笑する聖を鼻先で笑って、黒木は封を切って装着した。
「何だコレは。ちいせぇな」
「悪かったな!それでもフリーサイズだぞ!」
 聖が躍起になって言い返すと、黒木は不機嫌そうにそれを外した。
「こんなに締め付けられてやってられるか」
「ちょっっタンマタンマ!」
「これのジェルで少しはいいだろう。暴れるな。怪我するぞ」
 黒木はふたたび聖にのしかかって、ジェルで濡れた指を滑り込ませる。
 ゆっくりと圧し広げられたそこは、すぐに柔らかく黒木の指を包み込んだ。
「おまえ……人当たりが随分と違うじゃねーの」
「おまえに貴史の可愛らしさの十分の1でもあったらな……。考えてやってもいいが」
 黒木は呆れた表情のまま聖に挿入した。
「痛って──っ!!」
 苦痛の表情を浮かべて、聖は思わず黒木の肩に爪を立てた。
「コラ、力抜け。すぐに良くしてやるから」
 ちっとも良くない。
 そんな不機嫌さを見せる聖だったが、ゆっくりと繰り返される圧迫による快感が、全身を次第に熱くした。
 やんわりと締め付けられる心地よさを感じた黒木は、聖の昂揚を知ってその身体を起こして抱き上げる。
 それによってより深く繋がった身体は、強い刺激に身震いした。
 背中から抱きすくめられて、うなじに接吻を送られる。
 聖の背中にゾクリと快楽の波がはしって、皮膚が粟立つ。
「ま、さ……」
 次第に強くなる律動に揺さぶられながら、さらに加えられる聖自身への愛撫によって、堪えきれない愛液が染み出てくる。
「おまえ……デカイくせに掟破りの硬さなんだ。……少しは加減しろ」
 快楽を感じながら苦痛でもある。そんな複雑な興奮は久しぶりで聖は戸惑っていた。
「膨張率の勝利だ。……遠慮しないで堪能していけ」
「クソッタレ!」
 全く手加減なしの責めは、聖のプライドさえも呑み込んで行く。
「あ……あ、あぁッ」
 迫りくる絶頂感に思わず声が漏れる。それでも聖は、ふたたび声を圧し殺して耐えようとしていた。
 黒木の愛撫に溺れそうになる自分を認めたくはない。だから絶対に先に達きたくはない。
 そんな意地を張っていた。
 その時、黒木の携帯が鳴動した。
 黒木は聖の腰を抱いたままコールを受ける。
「──はい。黒木です」
 耐えていても漏れる聖の喘ぎを片手で塞いで、何食わぬ様子で応答した。
「ええ。……分かりました。接舷までの予定時間は?」
 少しだけ動きが緩慢になっても律動は続けられている。
 聖はそんな黒木の余裕が憎らしい。
「了解。ブリーフィングルームで待機しています。出番が来たらコールを下さい」
 黒木はそう言って一旦通話を切ると、次に土井垣をコールした。
「──出撃待機命令だ。遮那王鎮圧に乗り出すぞ。全員に招集をかけてブリーフィングルームで待機していろ。俺もあと15分程でそっちへ行く」
 こんな事をしていながら、偉そうに指示を出すとはたいしたタマだ……と聖は思う。
「……馬鹿……そんなんじゃない。貴史は今頃ハンガーで待機している」
 黒木は土井垣に言い訳を残してラインを切った。
「こ、の……鬼畜野郎。……人とこんなコトしている時に、仕事なんてしてんじゃねぇ!」
 聖は塞がれていた声を解放して悪態をつく。
「公務に支障がない程度にしておかないとな」
「偽善くせぇ……最低」
 喘ぎながらの罵詈雑言が、昂まる快感で泣き事に変わってゆく。
 背中に黒木のくちづけをもらって、快感が全身を支配する。
「──サディスト!変態!」
 焦れて疼いて、淫らに濡れて。ビクビクと敏感に反応して。
 悔しいくらいに黒木を求めてしまう。
「なのに……どうしてテクだけは最高なんだよぉっっ!」
「──だから離れられないんだろう?」
「く……っそぉ。気持ちイイ」
「イクか?」
 黒木は聖の身体をうつ伏せにして、その上から抱き締めた。
 手を甲から握って、指を搦めて、そっと頬を寄せる。
「あ!……にゃろう。バックだけでイけってのかよ」
「達けるだろう?十分に開発済みだからな」
 黒木に深く貫かれて、奥の痛みと共に痺れるような快楽がふたたび聖を呑み込む。
「愛してるよ聖」
「嘘くせぇ……」
 互いの言葉が喘ぎに変わって行く。
 耳元に送られるくちづけによって、全身が粟立ち快楽に咽ぶ聖は、背中に感じる黒木の重みと温もりに全てを許して、あるがままの衝動を受け入れた。


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あきゅろす。
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