楽園の紛糾
天使になんてなれない2
「……そんなの分かるのか?」
「癖が似る程、溺れた事はないと思っていたんだけどな」
ふたりは互いの関係を認めてしまう。
野村は唖然とした。
「貴方がた……。まさか」
そこまで言いかけた野村は黒木に抱き上げられた。
「そんな事は気にしないでいい」
「え?」
動揺する野村を抱えて寝室に入ると、ベッドの上にはいつの間に入ったのか、既に聖が待っていた。
「こっちだよ〜ん。早くう」
嬉しそうに寝具の端をまくり上げて誘ってくる聖を見て、野村は黒木に抱き着いた。
「嫌だ!こんなの嫌だ!」
黒木は脅える野村を抱き寄せて、ついばむようにキスをして微笑みを向ける。
「淋しかった君に、せめてもの詫びを入れたい」
黒木は野村をベッドに降ろして、そのまま組み伏せた。
「君を愛してる。もう、自分から離れられなくしてあげるよ」
「オレを諦めようなんて、考えられないようにしてあげる」
ふたりの穏やかな笑顔がかえって怖い。
「三人じゃこのベッドは狭いかな?」
聖は本気で、この状況を楽しむつもりらしい。
「今は仕方ない。後でまたゆっくり調教してやるさ」
調教って何だ?野村は戦慄した。
「止め……」
言いかけた唇が、黒木に塞がれた。
ずっと黒木を求めていた。そんな不安定な感情が、野村の抵抗を抑制してしまう。
聖の存在に戸惑ってはいても、欲しかったキスと欲しかった温もりに絆されて、野村は黒木の背中に腕を回して応えた。
ユニフォームもふたりがかりで脱がされては、あっと言う間に肌が露出される。
外気にさらされて寒さを感じながら、温かい体温も直に感じて、そこに安心感を抱く。
「黒木さん」
泣きたくなるような切なさに追い立てられるように、野村は夢中で黒木に縋った。
「貴史。束縛しないほうが君のためだと思っていたから、自分は君の全てを奪ってしまわないように自制していた。……だが、もう限界らしい。君にあんなふうに言われてしまっては、これ以上我慢できそうもない」
唇だけではなく、瞼や頬にまでキスを贈られながら、野村はこれから訪れるであろう事を覚悟した。
その表情から野村の心情を察して、黒木はやんわりと微笑む。
「大丈夫。……無理な事はしない。ゆっくりと、慣らしていってあげるよ」
そう言ってから、黒木は野村の視界から消えて代わりに聖が顔を出した。
「オレがいるのも、忘れないでくれよ」
キスを贈られながら、野村は状況に流されていく。
抗う術はすでに失った。
「タカ。オレの事、好き?……好きでいてくれたよね?」
甘く、縋るような視線を向けられて、拒絶などできる訳がない。
「うん、好きだよ。あのとき本当に、もう一度君に会いたいと思ったんだ」
そう答えてから、野村はピクンと緊張して、一瞬の反応を見せた。
感情の如何にかかわらず、身体を支配する予測のつかない快楽の波は、無防備な野村を容赦なく襲う。
黒木の唇と舌が、敏感な部分をやんわりと包み込んでいた。
「きれいだ、タカ。そんなイイ表情されると、オレもどうにかなっちゃう。……たまらないよ」
聖は深く交わるようにキスをして、舌を吸いながら野村の手を導いて懇願する。
「ねぇ、して。……オレに、触れて」
ささやきに促され、野村はその指で聖の熱くなった部分をゆっくりと撫でる。
聖の喘ぎが、野村の耳元を熱く濡らした。
互いに昂まってゆくのを自覚しながら、野村はそれまで誰にも許した事のなかった部分に、熱い吐息がかかるのを感じた。そしてそこは、熱く濡れたものにやんわりと圧し広げられ、体の中に異物が挿入される不快感に変わる。
「あ!……やめ」
野村の全身に緊張がはしる。
聖を包む指が動きを止めて、聖はその変化を知って興冷めしたように黒木を見た。
「なに?」
「いいから、続けてろ」
意味深に笑いを含む黒木の表情から、聖は野村を支配している感覚を知った。
黒木の指がゆっくりとスライドしながら、中の敏感な部分を刺激している。聖はその快感を知っているだけに、野村の戸惑いが手に取るように理解できた。
「タカ、力抜いてごらん。そのほうが楽だし、気持ちいいはずだよ」
「嫌だ。……気持ち悪い」
硬く緊張したままの表情が、自分の中の常識を守ろうとする。
「タカがオレにしてくれた事だよ……。ちゃんと素直に感じて?先入観なんて捨ててしまえよ。気持ちいいんだよ、そこも。……知ってるだろ?」
例え様のない感覚は焦れったい。じわじわと溶けていくような、それでいて不意に達してしまいそうな、全く自制の効かない快感に呑まれてゆく。
「や……だ。変だ……変だよこんなの。聖っっ!」
聖の首にしがみついて不安から逃れようとしても、容赦なく続く責めに自制心が崩壊した。
熱く硬くなって、限界を予感させる体液を滲ませながら拍動を続けるそれを、黒木はふたたび咥えて舌で愛撫する。内と外の快楽に追い詰められて野村は興奮と混乱に煽られた。
快感はその部分から全身に波のように広がり、抗いがたい甘い痺れが恍惚とさせる。
「あッ……ん、んぅ……い。やぁッ……あッ」
やがて、中から押し出すような指の動きに触発されて、瞬く間に全身を緊張させた。
「あ……う、んんッ……でる!」
快楽の雫をそのまま黒木の唇の中に放つ。
脈動と共に吸い上げられて、身の置き所のなくなるような疼きに狂わされる。
「うッ……ううッ……あッ、あッ、や!……ああぁぁぅぅッッ」
コクンと黒木の喉が鳴る。
そして、残りの体液までも舐め上げてから、黒木は満足そうに指で唇を拭った。
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