楽園の紛糾
傷心7
遮那王の通路を全速で走り抜ける次郎は、群がる乗組員たちのタックルを躱しながら、カタパルトへと向かっていた。
監視役の隙をついて監視房を脱走してから通信室へ侵入したものの、本部への通報もままならないままオペレーターに発見され、取り押さえられそうになったところをまた逃げ出した。
フライトデッキ到着した時には、既にボロボロだった。銃器類の使用が許されない分、肉弾が飛んで来る。殴る蹴るの攻撃を受けながら、それでもその倍を返してやって来た。目指す先にはリーンフォースがある。その昇降機にたどり着いたが、大勢の乗組員に取り押さえられて脱出を阻止され、肋に蹴りの一撃が入り、強いダメージに膝を崩してその場にうずくまった。
「いい加減にしろ……。往生際が悪すぎるで、ジロ」
フライトデッキに一条が到着し、次郎の有り様を見て眉間を歪めた。
「立たせろ」
一条の指示で、パイロットがふたりがかりで、次郎の腕を拘束したまま身体を持ち上げた。
「自分の立場が分かっていないようだな」
惨めな姿を見て一条は呆れていた。
「俺は……」
話すのもやっとの状態が痛々しい。
「あんたたちを…止める、義務がある。もう少し待てば……真実が、見えてくる。軍上層部は、それほど馬鹿じゃない……。正式な指令を待っても、遅くは無いないだろう」
「何の真実だ?大統領の護衛にセレスが同行した。軍は和平交渉に協力している。それが全てだ」
一条の指摘で次郎は沈黙した。軍の存在そのものを信頼する次郎と、自分の信念が全ての一条では、軍の真意が見えない現段階では主張の一致は難しい。
「おまえの正義感ぶりには脱帽するがな。俺には俺の正義がある。クロイツは根絶やしにするべき敵だ。馴れ合うつもりは毛頭無い」
返された一条の言葉によって、次郎はその顔を悔しさに歪めた。
「監視房にぶち込んでおけ。今度は逃げられるな」
一条の命令で、次郎は再び監禁された。
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