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楽園の紛糾
傷心4





 二度目のシャワーを浴びていた沢口は、心身共に疲れていた。明け方の冷えた体には、その温かさが全身に染みわたるようで眠気が増す。
 迷宮からの出口を見つけ出したくて必死に足掻いていながら、ぬかるんだ道をさまよい続けて余計に深みに嵌まっていく。
 身体が焦れて、他所によりどころを求めたとしても、自身の求めるものからは逃れられずに心だけが置いていかれる。他人と肌を合わせる事を覚えたけれど、それはいつも罪悪感と虚無感だけを残すだけだった。
 身体の熱が冷めてしまえば、その名残りは嫌悪感さえ呼び起こす。
 それなのにまた、熱に浮かされた身体を鎮めるための場所を求めてしまう。
 そんな空しい事の繰り返しは、彼の心を荒んだものに変えていった。
 独りの部屋に帰って来てから、沢口はいつも、どんなに遅くなってもシャワーを欠かさなかった。いつもそんな嫌悪感に陥るのが判っていながら、それでも独りではいられない夜は、既にもう歯止めの効かない自分がいた。
 そうやって、長い休暇が無為に過ぎて。再びユニフォームに身を包んでも、汚れた自分が隠せないような気がして、親しいはずだった者に顔を合わせられなくなってしまった。
 そんな自分の全てに嫌気が差して、沢口は辞表を提出した。

 沢口の様子を杉崎はずっと案じていた。しかし、関わる機会も成す術もないまま時間だけが過ぎて、哨戒艦艦隊の新たな問題まで発生した。
 沢口に関わりきれない自分の在り方に歯痒さを覚えて、更に伝えられた辞表の一件は杉崎を追い詰めた。

 哨戒艦艦隊の動きを止めるために、フェニックスは出航する。
 許された時間は残り少ない。



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