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楽園の紛糾
love me12





「……西奈」
 西奈の腕の中で体を返して、橘は自分から彼の首に抱きついた。
「もし、おまえの今までの事の全てに嘘が無いなら、俺はきっと無防備におまえを好きになる。もう……とめられないよ」
 橘の告白に、西奈は感極まって抱き締めて応えた。
「でも、今までそんなふうに思った事なんてなかったはずなのに……。身体繋げてしまってから急に好きになるなんて、なんか、そんなの嫌だなって思うんだ」
 正直な思いに西奈は苦笑した。
「橘さん。僕は身体だけじゃありません。ちゃんと気持ちが欲しい。きっかけや順序がどうあれ、気持ちがちゃんとついて来ているなら、それでいいと思うんです。いけませんか?」
 穏やかな微笑みが向けられて、橘は安堵した。それは嘘じゃない。橘に西奈の想いが伝わった。
「本当?」
 身体を離して確認する。
 意図せずふたりの視線の下に見えた朝の象徴は正直で、既に橘を欲しがっていた。
「──あ」
 それを見られてしまった西奈は、散々偉そうに理想を語っていた自分を自分で否定してしまったようできまりが悪い。
 橘はクスクスと笑った。
「──なら、もうナンパは卒業してくれよ。俺だけのおまえじゃなきゃ嫌だ」
 穏やかな笑顔と、育ってきた独占欲を向けられて西奈は頭に血が上る。
 蠱惑的な表情で応える橘が可愛くて仕方ない。
 艶然としてクスクス笑って、ふたりは唇をついばんだ。
 愛しさがあふれるように込み上げる。西奈は、橘の警戒の緩んだ瞳をじっと見つめた。
「なに?」
 尋ねられて、西奈は抱き寄せてささやいた。
「──愛してる」
 突然の甘い言葉に驚いて、橘は茫然として黙り込んでしまった。
「愛してる」
 キスを贈りながら繰り返すささやきが、橘をふたたび骨抜きにしていく。
「あ、西奈……」
 首筋に贈られる接吻で、もう残っていないはずの情熱が、ふたたび中心に集中してきた。
「こういうときくらい、諒……って呼んで下さい。翔子さん」
「なにぃっ!」
 嫌な呼称を使われて怒った橘だったが、すぐに笑う西奈にベッドにねじ伏せられてしまった。
「ごめんなさい。冗談ですよ……。可愛いんだから、もう」
 嬉しそうに橘を見つめる視線に晒されて、橘の胸で鼓動が高まる。
 愛しさをまっすぐに伝えてくる、抱擁するような視線を向けられるのは初めてで、全てを包み込む優しさをもつ瞳の力は偉大だ。
「諒……」
「うん?」
「抱いて」
 甘える様が素直で可愛い。
「良かった。……感じている事は同じなんですね」
 西奈はそっと触れるだけの接吻で応えた。

 やっと還る場所を見つけた。
 ずっとこの日が訪れるのを待っていた。
 橘は安心して微笑みを浮かべて、西奈の胸に頬を寄せた。





2.love me
――終――

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あきゅろす。
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