楽園の紛糾
love me8
「──なんで、そんな事訊く……」
不安がない訳ではない。
身体を繋いでも、心まで抱いてはもらえない苦い思いは今までも十分に味わって来た。
けれど、橘は西奈を信じたかった。
頼りなく揺れ動く感情で、泣き出しそうになっている橘を見て、西奈は慌てた。
「あ……すみません!あの……」
どう仕様もなくオロオロするだけの西奈に焦れて、橘は首に両腕を回してやんわりと抱き着いた。
「……早く」
恥ずかしいけれど、素直な気持ちをふりしぼって伝える。
そんなふうにされては頭に血が昇ってのぼせてしまう。西奈の顔が耳まで赤くなった。
「はい」
西奈は感無量で橘を抱き返した。
くちづけを交わして、迷いなく責め立てて着衣を全て剥ぎ取る。
肌を合わせると、もうそれだけで達成感で満たされた。
思えば、長い間気づかないまま側にいた。
彼が好きだった。
その一挙手一投足から目が離せなくて、ブリッヂに勤めているオペレーターとして、同じ場所に居続けることが幸せだと感じていた。
その感情の正体がこんな熱い情を伴っていたなんて、我ながら疎いにも程があると呆れてしまう。
有り得ない感情だと、自分自身で無意識に押し込めていたに違いない。
それに気づいてしまえば、ずっと側にいつづける事が出来た幸運に感謝すら覚える。
愛しいこの人の全てを手に入れて、これからもずっと共に生きていけるなら。それは、真に幸せなことに違いない。
今、この世界に生まれてきた事によって、もし、彼が自分を受け入れてくれるのなら、自分たちの関係には何の障害もないと思えた。
熱くなった芯柱を撫でて扱いてみると、途端に甘く喘いで抱き返された。
頬にも額にもキスを贈って、快楽に歪む官能的な表情を愉しむ。
張り詰めたそこはぬめる蜜をこぼして、西奈の指先を濡らした。
橘の全てを手に入れたい西奈は、そっとその下の窪みに指を滑らせた。
窪みの奥にひっそりと息づいていた可憐な窄まりに、漏れ出る体液で滑らかに潤った指を押し当てる。圧を加えると、それはぬるりと橘の体内に入り込んだ。
「──ん……あ!」
思わず漏れる喘ぎだけで抵抗を見せない。橘は西奈を受け入れるつもりでいる事を知った。
指を挿れたまま愛撫を続けて、固く閉ざしていた部分を解して馴染ませてゆく。
時間を掛けて、中を探る指を増やして、全身にキスを落として追い詰める。
与えられる快楽に焦れて、橘は拓かれる事への不安も苦痛も感じなかった。
はちきれそうな程に硬く勃ちあがったそこにキスをもらって、狂おしい興奮に呑まれてゆく。
「っあ……ん…ぃ……」
西奈にされていると思うだけで信じられない羞恥が襲ってきて、心臓が破裂しそうな程の勢いで撥ねた。
「あ……。大丈夫ですか」
こんなに淫らにひとを貶めておいて、気遣わしげに尋ねる西奈の自覚のなさは天然なのか。
橘は限界を感じ始めた不埒な欲に急き立てられた。
「──もう」
「はい?」
「してよ。……も、限界」
そんな風に誘われては我慢が利かなくなってしまう。
折角丁寧に拓いていたのに、誘惑に負けてはいけないと自制しつつ、西奈の方が焦れてたまらなくなってきた。
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