楽園の紛糾
love me6
そっと橘をシーツの上に降ろしてから、上着を脱いでベッドに上がった。
ネクタイで締めた襟元を緩めて、橘の身体を覆うように抱き寄せてからふたたびキスを贈る。
今はただ、このひとが欲しい。
西奈はそんな思いに捕らわれていた。
「橘さん」
瞼に頬にキスを贈って、甘く囁き続ける。
「僕はずっと……」
耳元にもキスをすると、橘が首を竦めた。
抵抗しようと思えば、簡単に押しのけることができる。なのに、橘は西奈の行為を止めようとはしない。
西奈は、橘の反応を確認しながら、少しずつ深みへと触れてゆく。
「あなたに……傍にいてほしかった」
熱い吐息が肌をくすぐって、不埒な感覚を与える。襟元にキスを落として、橘のシャツのボタンを一つずつ外していく。
橘は、求められる心地よさに抵抗する気にはなれない。ひとに求められる事への甘美な感情は、いつもその後の期待を裏切られてきたとしても、忘れられない魔力がある。
シャツのボタンを全て外して、西奈はまたくちづけを落とす。
何度も啄むように繰り返すキスは、優しさを伝える。
そしてまた強く抱き寄せた。
熱い呼吸が互いの耳元で誘惑し合う。
ひとつひとつの行為に区切りがあって、それは西奈のためらいを伝えた。
触れる唇がくすぐったくて。もどかしい。
熱く濡れる吐息とともに、耳たぶを舌先でそっと撫でられて。橘は、思わぬ快美に酔わされて甘い声を漏らした。
それを切っ掛けにしたように、西奈はまたくちづけを寄せてその奥を求めた。
歯列を舌でなぞって、今更ながら歯並びがいいんだなと感じる。
つるりとしたなめらかな感触は心地いい。そのさらに奥を撫でると、橘の足に緊張がはしって、シーツの上を迷うように滑った。
「……っふ、ん…う……」
甘い喘ぎが喉元にこもって、微かに洩れる。
キスを離して、鼻先を突き合わせるように見つめると、戸惑ったままの橘の顔が赤く染まっていて、どう仕様もなく情を掻き乱された。
「橘さん……」
どう伝えていいのか分からない。
もっと触れたいと思う。
彼はそれを許してくれるのか。
西奈は迷いながら、橘の胸にそっと手を伸ばした。
目の前の顔が不安そうに自分を見つめて、恥じらうように視線を逸らしてから目を閉じた。
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