楽園の紛糾
いつも君のそばに7
セントラル郊外にある自宅に帰った次郎は、その駐車場や路上にまで乗用車であふれている事に驚いた。
「なんだこりゃ?」
仕方なく路上に単車を停めて森を促してドアをくぐる。すると、予想外の人物の出迎えにふたりは驚いた。
「あら、お帰りなさい」
料理を乗せたトレイを持って、ふたりの前を静香が横切った。
「あ、隊長!……っとちがった。艦長、おかえりなさい」
葵が同様にして笑顔で迎える。
するとその後ろから土井垣まで顔を出して来た。
「お。遅かったな」
「おまえ。……俺ん家で何やってんだよ?」
唖然として立ち尽くす次郎が尋ねると、土井垣は嬉しそうに笑う。
「何って。葵ちゃんとお給仕のお手伝いしてんの」
アイスボックスとグラスを手に、ポニーテールを揺らして笑う土井垣からは、普段の獰猛さは微塵も感じられない。葵とつき合ううちに、すこしは柔軟性を備えたらしいと思えた。……が、そんな事に感心している場合ではなかった。
自分の家で何が起こっているのか、次郎は森を連れてリビングに入った。
「よう。遅かったな」
事情を知っている兄が意味深に笑って迎えた。
ちゃんと森を連れて来た事に感心して、中でくつろぐように促す。
リビングには、知った顔が揃っていた。
「立川と早乙女を誘っただけのはずだったんだが……。なぜか増殖してな。客の三人も十人も同じだっておふくろが言うから、いいんじゃないのか?」
自宅では鷹揚に構えている長男は、呑気にソファーにくつろいでグラスを傾けている。その隣にはお約束の立川が座って微笑んでいた。
「三人って?」
次郎は人数が合ってない事を指摘した。
「おまえが連れて来たろ?」
兄に反対に指摘される。
そんな事を予測していたということは、あのデッキでの一件を目撃していたということか。と、次郎は兄の意味深な笑顔の理由を知って、なんとなくバツが悪かった。
「森、こっちに来い。たまには一緒に飲もう」
森は立川に誘われて戸惑ったが、次郎にも促されて指揮官たちが陣取っているソファーセットに落ち着いた。
森のまぶたが腫れている理由を、ちゃんと分かってくれている者たちに任せた方が次郎も安心だった。
リビングを見渡すと、その片隅で杉崎家の夫婦が仲睦まじく杯を交わしている。若い部下たちに囲まれて上機嫌の主人は、女房の酌でさらに締まりがなくなっていた。
それでは一体、誰がこの大勢の食事を請け負っているのか。
次郎は釈然としなくて、キッチンをのぞいて見た。
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