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楽園の紛糾
I will4





「もういい。ひとの事情を勝手に決定づけるな」
「どうして?恋する男は魅力的だよ。君もやっとそんな経験ができたんだ。いいことじゃないか」
「面白がってんじゃないよ」
 涙目で凄んでも迫力に欠ける。
「年上の女性はなかなか良かっただろ?」
「そんなのわかんないよ。女のひとなんて、初めてだったんだから」
 早乙女は驚きのあまり動きが固まってしまった。
「初め……て?」
 早乙女の反応に野村は狼狽した。なぜ本当の事を言ってしまったのか、早乙女に対してなんの隠し事もしない自分が信じられない。
「そうか……」
 早乙女は蠱惑的な表情で野村の純情を愛しんでいた。
「いや!……あの」
 男ならいくらでも関係を持ったことがあるなどとはとても言えない。
「よかったな。彼女なら、初体験の相手には申し分なかっただろう」
 しかもどうやら早乙女は、妙に優越感を忍ばせた態度で接して来る。
「君もやっと大人の男の仲間入りができたわけだ、や、おめでとう」
 誤解もはなはだしい。……が、早乙女に対してカミングアウトする気は起こらなかった。
「そっかぁ。ドーテーくんだったのかぁ」
 やはり、機嫌がいい根拠は優越感である。
 野村はおもしろくなかった。
「さ、飲もう。恋と童貞を喪失したお祝いだ」
 早乙女はボトルを差し出して、乾杯の仕草を見せる。
「ばか言うな」
 野村は早乙女の乾杯を無視してボトルに口をつけた。
「機嫌良すぎるよおまえ……。そんなに僕の失恋が嬉しいのか」
「ちがうよ」
 早乙女は嬉しそうに、優しい視線で野村に返す。
「――僕と同じ感情を持っているやつが傍にいて、嬉しいんだ」
「おまえと一緒にするな」
 また、忘れたい感情が戻ってくる。
 野村はさらにボトルをあおった。



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あきゅろす。
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