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聖戦の礎 ―ジェイル編― (完結)
決着7





 沢口は咄嗟に窓の外へ逃れてから、思い切り後悔の嵐に呑まれていた。
 ジャッジに捕らえられては、正体が暴かれて大変な事になる。
 そう考えての行動だったが、それが浅はかな行動だった事に、今更気付いて途方に暮れた。
 工場の屋根に近い高さから見下ろす、晴天下での雪原は遠くまで見渡せる絶景だ。というより、そんな高い所の軒に所在なげに立つ自分は、落ちたら絶対に死ぬと確信した。
 室内のジャッジに気付かれないように、隣の窓に向かって壁を背に軒を伝う。
 足を踏みはずさないように、そろそろと刷り足で横に進む様は全くの曲者だった。
(やべ……落ちたら終わりだよ俺。……つか、雪って距離感無いけど、これって地上何メートル?)
 怖くて堪らなかった。
 心底後悔して、やがて、となりの窓に到着して少しだけ気を緩ませた途端、足元の劣化していた軒が崩れて、沢口の身体は直立姿勢のまま落下した。
 驚いた次の瞬間、衝撃が沢口の体を直撃して落下が止まった。
(――苦し……死ぬ。もう、死……)
 肩掛と外套が更に下の階の軒に掛かって落下を免れたが、首を絞められた状態で宙づりになった沢口は、じたばたしながら締まる襟元を弛めて、やがて肩掛をたぐって軒に昇った。
(シャレんなんねぇぇぇぇ。ヤバい。マジ、ヤバい)
 肩で荒く息をしながら、軒に片足を掛けた途端に再び軒が崩れた。
「うわあっっ!」
 沢口の体は片手で軒にぶらさがって、更に危機に陥っていた。
 ふと、目の前に窓があることに気付いた。
 それが室内の窓か、工場内の高窓か、中が暗くて判別がつかない。
 しかし、そのまま雪原に落下するよりは、生存確立は高いと判断した。
 沢口は両手で軒を掴んで、勢いをつけて目の前のガラス窓を蹴破った。そのまま室内に転がって、転落死を免れたと感激したのもつかの間、向けられた銃口に新たな危機を迎えた事を知った。
 どうにもならない現実に、沢口は引きつった表情で銃口を見つめた。




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あきゅろす。
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