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聖戦の礎 ―出征編―  (完結)
出征3





「――俊坊は納得するんか?」
 いつのまにか、ベンチの後ろからやってきていた沢口の存在に気付いて、一条は沢口を振り返って尋ねた。
「しませんよ」
 沢口は即答した。
 杉崎の表情が曇る。
 一条がそれに気付いた。
「何故、いつも自分たちは離れて戦わなければならないのですか? フェニックス艦隊として存在していながら、その力を発揮できないでいる」
 杉崎を問いつめる沢口の様子から、一条はこれから起こる多分に痴話喧嘩をも含むであろう諍いを予測して、ベンチから立ち上がった。
「お杉、俺はこれから出港の準備にかかる。先行くで」
 一条はそう言ってから、ベンチ越しに沢口を見つめた。
「俊坊、こいつはジロの事で、ただでさえ落ち込んでんねや。おまけに本部の命令で前線送りや。……せやから、あんまし責めんといてや」
 一条の指摘で、沢口は感情の平静を取り戻した。
「そんなつもりは……」
 沢口は、冷静になってから戸惑いを見せた。
「俊坊、おまえもいよいよジェイル送りやな」
 フェニックス艦隊は、惑星ジェイルの哨戒に配置される。
 一条は苦笑を隠し切れずに、沢口に告げた。
「あそこは俺の古巣やさかい、よう頼んだで。……作業長と、電気屋によろしく伝えたってや」
 一条はそう言い残して、中庭からビルのオフィスへと戻って行った。
 残された沢口は、何も言えなくなっていた。
 覚悟を決めた相手に、一体何が言えるのだろう……と改めて気が付いた。
 不意に杉崎が立ち上がった。
 深く息を吐いてから、沢口を見つめる。
 辛い心情が表情から読みとれた。
「出征まで、俺はオフィスには戻らない。精鋭部隊の調整に入るため、なかなか時間も取れないだろう」
 別れを惜しむ時間すらないと言う。
 残酷な事態に、沢口の心が乱れた。
「だが、フェニックスの出港準備が整ったら、連絡を寄越してくれ。何があっても、おまえに逢いに行く」
 杉崎の想いが、沢口の胸を切なく締め付ける。
 涙が、止めようもなく零れてきた。
「分かりました、提督」
 沢口にとって、他に言葉など見つからなかった。
 杉崎は、そのまま沢口から離れて、出頭を命じられていた総帥執務室へと向かって行った。





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あきゅろす。
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