終焉の時はなく
First contact4
「強い。ケタ違いに強い。……この新型。今までのパワードスーツなんて比じゃない」
ゲオルグと交戦し、その機動性に翻弄されながら実感する。何度かのタイミングでビームを発射したが、その全てを回避されてしまう。
戦いの主導権を握られ、その手のひらで踊らされているような感覚に、野村は屈辱さえ覚える。
「だが、火力なら負けはしない!態勢さえ逆転できれば……」
パネッシアは必死にゲオルグを振り払おうとするが、ゲオルグの反応速度はローダーをはるかに上回り、野村の思うようにはならなかった。
敵に追い詰められる野村に、焦燥が色濃く現れる。
「野村さん!下がってください!」
突然、通信を通して葵の指示が入った。
野村を追って来たガイアスが、ゲオルグをビームで追い払いパネッシアを解放する。
「あんたなんかに、野村さんをやらせはしない!」
ゲオルグの前に割って現れたガイアスは、そのままビームサーベルを抜いて切りかかった。
「わたしだって、好きな人ぐらい守ってみせる!」
ゲオルグもまた、電子ブレードを抜く。
ガイアスの攻撃を封じながらパイロットは苦笑していた。
ヘルメットを装着しないブルネットの長いストレートヘアが、ふんわりと衝撃になびく。
ブレンダ隊のスカーレットは、ヘルメットが嫌いだった。
「――威勢がいいわね、お嬢ちゃん」
接触により通信が交差する。
スカーレットの声が葵の受信機に入ってきた。
「どこまで通用するかしら……」
「なんですって!」
逆上した葵は、スカーレットの挑発に乗り、ふたたびビームサーベルを振りかざした。
「甘い!」
ゲオルグは、簡単にガイアスの攻撃を封じる。
「無謀ね……。まるで猪だわ。そんな事でこのわたしが斬れると思うの?」
スカーレットは小手先で葵をあしらい、翻弄する。
ゲオルグのナイフがガイアスのサーベルを払い、青白い光を放つナイフの熱線が、接近しすぎたコックピットを狙った。
「お遊びはここまでよ、お嬢ちゃん!」
絶体絶命のその瞬間、葵は微動だに出来ず、ただその切っ先だけを見つめていた。
「やらせるかぁ――っっ!」
無防備なガイアスにゲオルグが切りかかった刹那、態勢を立て直したパネッシアのビームランチャーが赤い光を放った。
アームごとサーベルを吹き飛ばされたゲオルグは、さらなる熱源の接近に気付き。機体を翻してビームをかわすと、接近するパネッシアに機銃の照準を合わせた。
パネッシアはゲオルグへと直進し続ける。
「下がれ!葵っっ!!」
葵は野村に命ぜられるまま、反射的にガイアスを後退させた。
「何?特攻する気!?」
ゲオルグも後退しながら機銃を掃射しパネッシアを迎えた。
進路を変えないパネッシアは、ビームでゲオルグのブーツとメインカメラをなぎ払い、ゲオルグの機銃もパネッシアのエンジンを貫く。
どちらも引くことのない攻撃の応酬を続ける二機がすれ違ったとき、パネッシアの翼がゲオルグの残ったアームに衝突した。
装甲がモザイクのように弾けて光を反射して煌めく。
その衝撃で翼を損傷したパネッシアの機体は、機銃によって脆くなっていた部分から崩れて大破した。
「嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――っっ!!」
その光景を目の当たりにして衝撃を受けた葵は、爆発の光源が消失してから怒涛のような絶望と混乱に襲われて絶叫した。
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