Novel 6 「じゃあ、うーん・・食べさせるとか」 「え?・・何に」 「・・・熊とか」 言ってて恥ずかしくなった。 「それが出来ればかなりいい線いくでしょうね・・。 最初から熊に襲われた風に装えるし。 でも熊がどこにいるかはちょっと分かりませんね・・」 そんな真面目に返してくれなくていいのに、と私は思った。 むしろ恥ずかしいから。 「死体を隠すのって、思ったよりも難しいんですよ。 だから皆、死体を隠すのではなく自分が犯人ではないように工作するんです」 「ええ、そうなんでしょうね・・よく分かりました」 そんな事言われてももう遅い。 万が一私と和宏の関係が知れたら、まず間違いなく私は捕まる。 今からアリバイ作りなんてできっこないし、どうすればいいのだろうか・・。 「井上さん」 「ハイ?」 私はガックリとうな垂れていた顔を上げた。 水屋が私をじっと見ていた。 「僕以上に、そういう事に詳しい知人がいるんですが」 「えっ!?」 そんな知り合いがいるのか!? やっぱり私はついている! 「ぜ、ぜひその方に連絡を取ってもらえません?」 「いいですけど」 水屋は携帯電話を取り出してから、もう一度私を見た。 「あ、こんな時間に電話をして失礼じゃないでしょうか?」 「多分大丈夫ですよ。 きっとまだ仕事中なんじゃないでしょうか」 こんな時間まで仕事? 同じこの学校の生徒だと思ったのだが、違うのかな。 「その方はどういう方なんですすか?」 水屋はちょっと困ったように笑った。 「刑事です」 [*前へ][次へ#] [戻る] |