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Novel


 私はすっかり参ってしまっていた。
推理小説のような状況を愉しむ気持ちは、どこへいってしまったのだろう。
容疑者のいない殺人、密室状態の便所。
・・どんなに考えてもいい考えは浮かばない。
小説の名探偵のようにはうまくいかないものだなぁ・・・。

「もう一度、トイレの中をよく見てみますか?」

せっかくの運転士の誘いだったが、あまり死体が目に入るのは嫌だなぁと思った。
しかし現場百回というし、もっとよく便所内を調べたほうがよいのだろうか・・・。
私は出来るだけ死体に目を向けないように、便所内をくまなく点検した。
もしかしたら何か抜け穴が・・と探してみたが、都合のよい発見があるはずもない。
穴といえば便器の穴があるが、この隙間から何か出来るとは思えない。
見たところ、細工の跡らしきものも見当たらない。
やはり普段使う人はいないのだろう。
便器はひどく汚れて錆び付いており、見ているうちに気分が悪くなってしまった。
結局この便所の出入り口になりえそうなのは、唯一鍵のついたドアのみのようだ。

「全くわけが分かりません」
運転士が言う
「犯人はこの密室をどうやって抜けたんです?」


その通りだ。
この密室から抜けるにはドアを開けるしかない。
しかしドアには鍵がかかっていた。


鍵が・・・。

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あきゅろす。
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