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Novel
19
  林田医院を出た私と轟は、近くの喫茶店に入った。
住宅街の端にひっそりと建てられた喫茶店は、こじんまりとした様子で中も薄暗い。
聴いたこともないような洋楽が流れている。
専ら常連客を相手にする店なのだろうと私は思った。
私達はカウンターから離れた奥の席に着き、コーヒーを二つ注文した。

「さぁどう思う探偵さん。
事件は解決できそうか?」

口調こそ冗談めかしていたが、いたって真剣な顔をして、刑事が訊いた。

「今のところはなんとも。
とりあえず事件を整理してみようと思います。

美散さんが誘拐(?)されたのは結婚式が予定されていた日の朝。
時間としては午前の9時から11時の間です。
そして殺されたのは同じ日の午前9時から午後2時までの間です。
状況から言って、誘拐されてすぐ殺されたと考えてイイでしょう。

この事件で判らないのは
・誰が美散を誘拐したのか
・誰が美散を殺したのか
・誘拐と殺害は同一人物の犯行か
・動機はなにか
・どうやって家族の目を盗んで誘拐したのか

細かい所をあげればまだまだあると思いますが、大きな疑問はとりあえずこのくらいでいいと思います」

「誘拐と殺害が違う奴の犯行なんて考えられるか?」

「うぅ〜ん、正直言うと私も無いと思います」

「これだけ考えると外部犯の可能性が高いな。
だが次の三木謙斗殺害と合わせると身近な人物の犯行だよなぁ・・」

「そうなんですよね。
とりあえず三木謙斗殺害のほうに移りましょう。
三木が殺害されたのは美散失踪から二日後の夜です。
死亡推定時刻は午後四時から七時と出ましたが、母親の証言により、午後六時半前後と絞られました。

この事件で判らないことは沢山ありますね・・
・誰が三木謙斗を殺したのか
・美散殺害と同一人物の犯行か
・動機は何か
・家が荒らされていたのは探し物のためか
 だとしたら何を捜していたのか
 それは今どこにあるのか
・何故頭部を切り落としたのか
・何故和歌を書いたのか

犯人の思惑が分からないことばっかりですね」

「花王寺美散殺害と同一人物じゃない可能性はあるかな・・」

「やっぱりないとおもいます。
まぁ念のために。
そう言えば、三木の言っていた花っていうのは何だったんでしょう?」

「プリムラだったか。
結局三木の言う美散の仕業ということはありえないわけだが。
だとしたら一体誰が何でこんなことをしたんだ」

その時頼んでいたコーヒーがやってきた。



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あきゅろす。
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