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オリジナル
clone 3
腕を引っ張っていた手はすぐはずれた。アオがバテてしまったからだ。
「だ、大丈夫です、か?」
なぜか背中をさすってしまう。今なら逃げられるんじゃないかとも思ったが、運動に自信はないし、名前知られちゃったし制服で学校も割れているだろうから大人しくすることにした。
「だから敬語いらなっぐッホッガハッ!」
盛大にむせた。慌ててさらに背中をさすりつつ、リュックを下ろしてペットボトルのミネラルウォーターを差し出した。飲みかけで躊躇すると思ったが、さっと蓋を外して飲みだした。
「ゲッホ!ガハッ」
水でまたむせた。これもう体弱いとかの問題じゃないと思う。ペットボトルを蓋を閉めてリュックにしまう。再度背中に手を伸ばすと、しゃがんだアオのブレザーにポタッと水が落ちた。
「雨だ。」
アオが上を見上げていた。やっと収まったらしいが、まだ声がかすれている。
しゃがんだまま尻ポケットから携帯を取り出しカチカチと操作して、耳に当てた。
「あー、あのさ、傘持ってきてくんない?うん、と、デカいスーパーの前の駅のファミレスにいる。うん。あとね、見つけたよ。うーん…わかんないけどまぁ、来てよ。」
コレぐらいの雨なら多少急いで帰宅すれば傘はいらないのでは。と、そこまで考えしゃがみこんだ理由を思い出し、納得した。そして見つけたって俺のことですか?
「じゃ、行こうか。」
立ち上がり前方を指差している。ファミレスはやはり俺も行かなければならないらしい。ゆっくり歩きだしたアオの後ろをついていく。細かい雨が重たい雲から落ちて、地面の色が濃くなっていく。時間のわりに、とても暗い。
アオには、俺が逃げたとしても追いかける体力はないだろうし、後々学校に押しかけてくるような奴ではないとなんとなく思う。すべて憶測だが確信できた。クローンとか変な妄想も全く信じていない。絶対面倒な話になる。

それでも逃げなかったのは、アオの真っ黒な目がどうしても心を離さなかったからだ。 



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あきゅろす。
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