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ゆすら様より
3年。

それはとてつもなく長い刻(トキ)だと、ラは 思っていた。 けれどキリキリと胸を痛め心を傷つけたあの夜か らもう既にその長い刻が過ぎていて。 時の流れの早さをしみじみと感じているサクラが いた。

あれからサクラは綱手に弟子入りを直談判し、医 療忍術の修業に明け暮れた。 ほんの僅かの誤差が患者の生死を分ける事もある 医療忍術。 マスターするにはチャクラコントロールに自信の あったサクラでも、かなりの苦労と努力、そして 時間を必要とした。 だが、そうする事で自分を保っている部分もあっ たのだろう。 自らを忙しく追い込む事であの夜を思い出さない ようにしていたのだと、サクラは今更ながらわか る気がした。 けれどそれは今思い返してみれば何の意味もな かった事に気付く。

何故ならサクラはあの夜を…彼を忘れられた日な ど1日としてなかったのだから。

あれからすぐ、ナルトは自来也に付いて修業とい う名の旅に出てしまった。 カカシはというと、木の葉崩しの影響で人手不足 となった為に任務へと借り出され多忙を極めてい て。 サクラは綱手に師事し医療忍術を学びながら、シ カマルが中忍となり抜け出た10班とスリーマンセ ルを組み中忍試験に再度挑戦、といった風に第七 班は見事にバラバラとなっていた。

もう子どもではないサクラは状況から仕方のない 事だととわかっていてもやっぱり受け入れられな い日もあり、情緒不安定になる時もあって。 そんな日に限ってサクラが何気なく夜空を見る と、決まってあの日と同じ三日月が浮かんでい た。

「…なんで今日もアンタなのよ……。」

カーテンをクシャリと掴む。 それがスイッチになったのか、細い三日月の輪郭 がぼやけて映る。 静かに瞳を閉じると頬を涙が伝い落ちた。

その日は一晩中泣き明かした。 サクラはそうする事で気持ちを切り替えている。 下手に涙を堪える方が次の日にまで引きずってし まい、修業に身が入らなくなった事が何度かあっ たのだ。

どうして忘れられないのか。 その理由がわかるなら教えてほしいと何度も願っ た。 けれどいつも答えには辿り着けないまま、次の朝 を迎えてしまう。

顔を洗って深呼吸して、修業に向かう為の身支度 を整える。 しかしサクラの頭から彼の存在が消える事などな くて。 伏せっぱなしにしてある写真立てを手に取った。

そこにはサクラとナルトとカカシと…彼が写って いる。 あの頃の自分を思い返し、サクラはふっと笑っ た。

「…サスケくんがいるだけで幸せだったのに…。」

サクラの脳内に繰り返し浮かぶのは、彼の一言一 言に一喜一憂する幼い自分と、常にどこか遠くを 見ていた彼の憂いを帯びた美しい横顔。

「結構頑張ってたんだけどな、あの頃も。」

でもちっとも近づけなかったな、とサクラは指で 写真の中の彼を弾く。

「ズルイよ。ナルトと2人して私を置いてくなん て…。」

彼に繋がるであろう情報は驚く程少ない。 それはこの3年間でほぼゼロに等しい程の少なさ だ。

サクラは徐に、最近再び短く切りそろえた髪に手 を伸ばす。

彼に見てほしくて、触れて欲しくて、好きになっ て欲しくて伸ばしていた長い桜髪は3年前にサク ラが自ら切り捨てた。 それは夢ばかりに目を向け現実の厳しさを知らな かった己と決別し、強さを掴む為に決断した行動 だった。 けれど、そうまでして傍にいたかった彼は一人、 遠い闇へと身を投じてしまい、今どこにいるのか すらわからなくて。

サクラは修業中に暇が無くただ伸びっぱなしに なっていた髪を数日前に切ったばかりだった。 それはサクラのただの無意味な意地なのかもしれ ない。でも彼を忘れて新たな幸せに目を向けるな んて選択肢、浮かびもしなくて。

「サスケくんがちゃんと私を見てくれるまで、諦め ないから。…例えサスケくんがどんな遠くに居た としてもね。」

小さな音と共に写真立てを伏せ、どこにいるのか わからない彼との距離を改めて想う。

Distance. いつまでもaddicted to you 君しか見えなく て

忘れられれば、よかったのに。 そう思いながらも彼を追い続ける自分に苦笑しつ つ、サクラは今日も綱手の元へと向かうのだった。**********************
桜月様の10万打企画に参加させさていただきました!
distanceをリクエストさせていただいたのですが、サクラちゃんの気持ちが切なくて涙が…(;_;)
早く帰ってきなさいサスケくん!と思わずにはいられないです。
こんな風にサスケくんを思って泣いているサクラちゃん、、、早くサクラちゃんの恋の矢印が誰に向いているのか知りたいです(^^)願わくば、サスケくんでありますように!
ゆすら様、本当に素敵な小説をありがとうごさいました!




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あきゅろす。
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