猫はご主人様に夢中! 1 1 学校帰りの道。 冬は本当に寒い。金曜日の夕方、北風に吹かれながら歩く。 「なぁ、昨日TV見た?」 そう問いかけてきたのは、中嶋幸太。 俺の親友の幸太は小学校からの仲だ。 「…何の?(どうせ猫だろ…)」 「猫の特集だよ〜もうさ、可愛いのなんのって…」 でたでた。こいつ、この話になると長いんだよな。 こいつと会ったときからそうだったな。 確か猫を家に連れ帰ったら母さんと妹にぼこられたとか言って、俺んちに持ってきたことを未だに覚えてる。 そん時は母さんも父さんもいて...祖母ちゃんもいたな・・・・。 「恋人?」 「何?」 「聞いてた?俺の話。」 「普通…」 なんだよとか笑いながら歩いて行くと商店街に入る。いつもこの道を通って家まで帰るんだけど、やっぱ昔とは時代が変わったんだろうな。 どこをみても… 「最近さ、獣人間多くないか?」 ああ、それそれ。 獣人間ってのは動物の耳やらしっぽやらが付いている人間。 最近は人間が獣人間を飼う習慣がで出来たらしい。 「...獣人間でも可愛いのか?」 「もちろん! 猫なんか可愛いじゃん」 そんな同意求められても…ひたすらごまかす。 なんでこんなに獣人間を飼う奴らが増えたのか俺は知らないけど、あれめちゃくちゃ高いんだぞ? わざわざ買うなんてありえない…な。 横断歩道に差し掛かったとき、ちょうど赤信号に変わった。 「あ、お前今日バイトじゃなかった?」 「!…そうだった…」 やべぇ!とかごめん!とか口にして、大急ぎで坂をかけていった。…相変わらずの馬鹿さに俺は安心していた。 そろそろ俺もバイトしようかな…。 実は、今住んでいるのは幸太の家族から譲ってもらった家だ。最初は凄く戸惑ったけど、中嶋一家は優しかった。 俺が小学生の時に自殺をはかって死んだ両親。 俺を引き取ってくれた、祖母ちゃん。 祖母ちゃんも3〜4年前に倒れてそれから入院しちゃって、毎週日曜に少しだけ会いに行く。他の遺族の方に結構嫌われてるからな…なんたって親は自殺だから、やっぱ疎いのかもしれない。 なんか俺の周りに居た奴らは皆、不幸になっていくような気がする…勘違いだったらいいんだけど…さ。 一人脳内会話が増えたな、横断歩道の信号が青になったのに気づくこともなく、もう一度青い光がチカチカとして、俺の目の前で赤になった。 ポスンッ いきなり肩に乗った小さな手。 「レント君? 何でおにぃと一緒じゃないの?」 幸太の妹の唯音だ。ちっこくっていつも幸太と一緒にいるが、幸太の話だと相当猫が嫌いらしい。 「ああ、あいつならバイトだよ」 「あ、そうなんだ。 じゃぁ一緒に家まで帰ろう?」 「ん?いいよ、俺も一人で帰る寂しい奴はごめんだ」 あははと笑いながら、今度こそ道路を渡った。 [次へ#] [戻る] |