青空に手は
逃げ出す?
沖田の部屋に宇宙が住み着いてから何日かたった頃
それは起きた。
いつものように宇宙は喋らず、部屋の隅っこで座っていた。
だが最初にあったような怯え方は今ではせず、沖田と話すようにもなっていた。
まあ、宇宙はただ相槌を打つだけだが。
「それじゃあ、俺は見回りに行ってきやすんで」
ちらりと宇宙を見たあと、沖田は襖を閉めた。
ひとり取り残された部屋の中で、宇宙は膝をかかえた。
どうして俺は、ずっとここにいるんだろう。
逃げ出さなければ、いずれあいつらが来るはずなのに。
いや…
「逃げ出す…?」
違う。
俺は逃げ出そうとしていないんだ。
だって
ここは、とても 逃げやすい 環境なのだから。
部屋から出してもらえずとも監視は沖田と地味な男ひとり。
恐らくは隊士全員が斬りかかってきても俺は逃げだれるだろう。
それが分かっていても逃げ出さないなんて…
「…ふ…」
ああ。
俺はどこまでも自分に甘いんだな。
→
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!