[携帯モード] [URL送信]

book
良かった







「っ、はあ…は…」



今日も暑い日差しが降り注ぐ。
こんな日に全力で走るなど自殺行為だろう。
だけど今は…

今だけは…!



「あ、夕陽!」

笑顔でこちらに手を振ってくる皐月の姿が見えた。


あの、黒猫の姿は今のところ見えない。



「わ、すっごい汗…」

「来て皐月!」


話そうとした皐月のセリフを遮る。
僕の汗ばんだ手が皐月の暖かい手を掴んだ。





「え、どしたの…?」


「いいから!!」


ただただ行くあてもなく走り出した。
僕の後ろで皐月が何かを言っているようだけれど今は
そんなことも考えられない。


とにかくあの公園から…

あの猫がいるところから離れたかったんだ。





「ちょ、待ってよ夕陽」


「でもっ…!」




ああ


振り向くんじゃなかった


無理やりにでも階段を駆け上がれば良かった










『ね、いつまで走るの?』





視界に、


入れなければ良かった。


[*前へ][次へ#]

12/23ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!