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バレンタイン・kiss(銀八桂)
valentineday記念












「バレンタインデー…。」

以前より明るくなった帰り道を歩きながら桂はつぶやく。

バレンタインデーの存在は知っていたし、毎年少なからず女子から貰っていた。

それなのになんでこんなに悩んでいるかというと、それは今日の5時間目の授業にさかのぼる…。







その日も銀八先生はいつものように遅れて授業に来た。
これまたいつものように、「ヅラとれ―」「ヅラじゃありません。」とお決まりの会話をした。



「先生―!!そろそろバレンタインデーですが、誰からも貰えそうにありません!!どうすればいいですか――!!」



そうだ…この近藤の一言から始まったんだ。
その言葉に他の生徒がつっこんだり殴ったりしていたのだが、銀八先生の一言で教室が静かになった。


「あ―俺もかも。本命の子からは貰えそうにないんだよな―。その子ったら鈍い子だからね。うん、絶対忘れてる。」



えぇ―!!?先生にそんな子が!?変人だ!変人だよ!!先生私があげます!!

などと、さっきより騒がしくなった教室の中。流石に色恋に疎い桂でもしっかりわかった。



先生は俺からのチョコを期待してる…?






…そして今に至るわけで。「はぁ…何か作るっていってもバレンタインデー明日だし。まったく…欲しいならもっと前に言ってくれればいいのに。」


とはいいつつ、大好きな人が期待していると知れば、それに答えてあげたい。

よし…明日だけど、まだ明日まで時間はある!最高の物を作ってやる!!と、気合いを入れて家へと急いだ。










『今日の放課後国語準備室行きます。』



桂からメールが来た。どうやら鈍い俺の彼女にも、昨日のメッセージが伝わったようだ。


思わず頬がゆるむ。

正直楽しみだったりする、桂は料理上手いし。



『おぅ。待ってる』

と返事をし準備室のソファーに寝転がる。











やっときた放課後。授業中に何度か桂と目があったが、顔を赤らめ目をそらす。その反応が可愛くて可愛くて…いつもより頻繁に桂に目線を向けた。





「失礼します。」



ガラガラとドアを開け、桂が入ってくる。
手にはチョコが数個。帰り際に神楽あたりに貰ったのだろう。


「今日は…先生がいつもゆりこっち見る回数が多くて恥ずかしかったです。」


カバンをソファーに置きながら桂が言う。「ハハ…だって顔赤くしてて可愛かったんだもん。」


「…………先生のバカ。あ、先生これ。」


桂が思い出したようにカバンをあさり、中から綺麗にラッピングされた物を取り出す。


「これ…先生に。うまく出来てなくてごめんなさい。」


その包みを手に取り開けてみると、そこには大福。



「俺…和菓子なら得意なんで…でも、バレンタインだからチョコが欲しいのかなと思って…チョコ大福。」



なんとも桂らしいバレンタインチョコに自然と笑みが零れる。



「サンキュ。すっごい嬉しい!昨日突然言ったから困ったろ?ごめんな、なんか恥ずかしくて直接言えなくてさ。」


俺の言葉に桂が笑う。


「あの……さ、チョコだけじゃなくてお前も欲しいんだけど?」



ニヤニヤしながら桂の肩に手を置くと手を抓られる。



「先生…今日は木曜日です。明日学校だからだめ、金曜日…泊まりますから今日は一緒にチョコ食べるだけで我慢して下さい。」


まるでお母さんみたいな言い方。
しょうがないので手を離し、ソファーに腰掛け隣をポンポンと叩き、隣に座るように言う。

満足したのか桂はにっこりと笑い、隣に座る。「んじゃ、はい。あ―んってしろよ。それぐらいいいっしょ?」


「フフ…はい、あーん。」



「ん!うまい!!さすが桂だな!!」


笑いながら頭を撫でてやると少し照れたように笑う。

いい嫁さんになるなぁ…うん。


桂の新妻姿を想像しつつ、外が暗くなるまで桂との時間を楽しんだ。





















end.


























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あきゅろす。
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