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ぼくはねこ
4.

カイとシノと話していると、屋敷の方からエマが手招きしているのが見えた。
近くまで来ないのは多分カイが怖いからなのだろう。

「ちょっと行って来ます」

シノにそう言い、走ろうとしたところでこの前ジューンに咎められたのを思い出し、焦らず歩いて行く。

「どうしたの?」

「出産前にルナに言っておきたい事があるから。私の部屋においで」

これまで何人かの出産を見て来たエマがアドバイスをしてくれるそうだ。
エマの部屋は1階にあり、中に入るのはこれが初めてだった。
椅子に座るように言われて、エマと向かい合う。

「獣族どうしから産まれてきた子供は両親の特徴を受け持つ事は知っているね?」

こくんと頷く。
両親共に同じ獣種だと、生粋の子どもが産まれてくるが逆に父親が犬族、母親が兎族、ということならそれぞれの特徴を引き受けるのだ。
ルナも実際何回かハーフの子を見た事がある。
ルナのお腹にいる子も人間と猫族のハーフとなるのだ。

「人間の血は濃いから、その子供には獣の特徴は現れない。もちろん遺伝子は受け継がれているけどね。」


ということはこの子には猫耳や尻尾はついていないんだな、と自分のお腹を見る。
するとそれに答えるように少し動いた気がした。

「でもルナの場合は特殊だからね、もしかしたら猫耳が付いて産まれて来るかもしれない。」

「え、そうなの?」

「ええ。猫の出産自体は付き添いがいなくても出来るくらいポロっと出てくるけど、ルナの場合はわからない。」

「……」

それでも隣にジューン様がいてくれれば大丈夫だと自分を励ます。


もう少しな気がする。

もう少しで産まれて来る…ー



* * *





その日の夕食もいつもと変わらず皆そろってテーブルを囲んでいた。
メニューはルナの好きなスパゲティで沢山の野菜が入っている。
少食のルナも子供が出来てから栄養のある物をいっぱい食べるようになって、前より顔が少しふっくらしたようだ。


「沢山お食べ」

とジューンはルナに目を細めながら言う。
はい!と元気に返事をした。




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