ぼくはねこ
1.
"堕ろすのなら今日中に手術をしなければいけない"と言われた。
妊娠している、と病院にいってはっきりわかった日から1週間。
あまりお腹の子が大きくなると堕ろせなくなるらしい。
まだ大きくはなっていないが、自分のお腹に手を添える。
「…お母さんだよ。聞こえる?」
声をかけてもそれは静かな部屋に溶け込んでいくだけだった。
ルナは今ジューンの部屋にいる。
カリカリ、と聞こえて耳をすます。
それは扉のほうから聞こえて行ってみるとキナコがちょこんと座っていた。
それからルナの足をつたって肩まだ登る。
「キナコ、どうしたの?」
(ルナが元気ないから)
「……」
否定出来ない。
頭の中は赤ちゃんとジューンの事ばかりなのだ。
(赤ちゃん…どうするの?)
ルナが妊娠しているのはシノと仲の良い動物にしか言っていない。
「……」
(ルナのしたいようにすればいいんだよ?)
「でも…」
嫌われるかも
(こわいの?)
産むのがこわいのではなく、ジューンに嫌われるのがこわかった。
妊娠しているかも、とエマに言われた時のジューンのあの顔がはっきりと脳裏をよぎる。
男が妊娠なんて理解出来ない、と思ったに違いない。
(ルナ、大丈夫だよ。)
優しく声をかけてくれるキナコにニコっと笑った。
そしたらキナコがさらに心配そうにしたので多分ちゃんと笑えてなかったんだと思う。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!