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ぼくはねこ
8.

あれから2日が経った今でもマーシャは相変わらず仕事をしていない時のわずかな時間のジューンにべったりだ。

ジューンとゆっくり話していない。
今も仕事部屋にこもっていているし、こんな事を思うのは、わがままだってわかっている。

いつもの朝の散歩へ出掛けようと準備をする。
シノは最初マーシャも誘い、一緒に湖に行こうと言っていたがカイがあの大きな犬という事を聞いて"行かない"と言い出した。
それどころか暇なのでショッピングに行く、と返事も聞かずにシノを馬車まで引っ張り、行ってしまった。

「はぁ」

(ルナ、元気ないな)

「そんなことないよ」

カイの背中に乗り、空を見る。
ルナの心情とは裏腹に雲一つない快晴。

「…いい人なんだと思うのに…なんだかジューンさまを取られたみたで…ぼくって本当に嫌なやつだね」

自分でもこんなに心が狭いなんて思ってもいなかった。
最初は見ているだけでもいいって思っていたのに、今ではこんなに嫉妬深くなっている。

(そんなことない。誰だってそうだ。)

仰向きになっていたのを動いてカイにしがみつく。
お昼時、シノとマーシャが乗った馬車が屋敷に戻ってくるまでルナはずっとそうしていた。



* * *

「あ〜楽しかった!あそこの服屋、本当に色んな種類の服が揃っていて迷って困っちゃう」

困ると言いながらも上機嫌にマーシャは喋る。
ジューンは忙しいらしく、シノとマーシャとルナの3人での昼食。
時々シノがルナに会話を振ってくれるが、マーシャはこちらを見ようとしない。
まるで存在ルナがしないかのように。

「ルナ、これ好きだろう?」

シノはそう言って自分の皿に乗っているトマトをルナに取るように促す。
トマトは大好きで、よくジューンにも貰う。

「いらないなら私に頂戴よ」

フォークを持つ手を伸ばしシノの皿のトマトを刺した。
伸ばしかけていたルナの手は行き場をなくして結局元の位置に戻す。

「ルナにやろうとしたのに」

「いいじゃない。ああ、おいしいわ」

パクパクと次々に食べるマーシャ。
目が合ったと思えば、睨まれた…気がした。
気のせいだと思う…。

なんだか村にいた頃のセシルと被って見えた。

「うぅ、」

突然の吐き気がし、食べていた物が戻りそうになる。
ガシャっ、とフォークを落とす音が部屋中に響いた。

「ルナ?!大丈夫か?」

シノが席から立ち上がり側まで来て、背中をさすりながらルナの顔色をうかがう。



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