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ぼくはねこ
1.


ルナはあれから部屋を移され、寝るときはジューンの部屋に、プライベートはジューンの仕事部屋の近くに移動した。
前の部屋に無かったたくさんの物がある。
トイレもそうだし、ソファ、机、キッチンも。
それらが余裕で入るくらい部屋が大きい。

その中でルナが1番喜んだ物は鉢に入った金魚だった。
最初はこんな小さい所に入れられて可哀想だと思ったが、話を聞いていると川にいた頃より安全で快適らしい。
コンという名前のその金魚はもう10年生きているという。
4歳の時にこの屋敷にきて色んな部屋に移されてきたみたい。
コンにこの家の話しを聞くのがルナの楽しみになっていた。



ルナとジューンの結婚が決まってからもう1週間が経っていた。

「はぁ」

コンを見ながらため息をつく。
結局、あの日シノに明かそうとして
"ぼくー…"
それ以上の言葉が出てこなかった。

「このままここにいていいのかな…嘘をついてるみたい…」

独り言をつぶやくルナをコンが静かに見つめる。
何も言わないでいるとまた水の中をゆらゆらと泳ぎだした。

コンコン

ドアが叩かれ、開くとエマがいた。
エマはルナがこの環境に慣れるまで自分も屋敷に残ると言ってくれたのだ。

「もうすぐ夜ご飯だよ。」

「わかった。」

扉を一旦しめ、コンの鉢の隣にある小さな皿から一握りの粉状のエサをぱらぱらと落とす。

(ありがとう)

「ううん。ぼくも食べに行ってくるね」

部屋を出ると仕事が終わったジューンも丁度出てきた所だった。

「ジューンさまっ」

「ルナ」

ジューンの元へと走っていく。
ルナのその顔は誰もがわかるくらいジューンに会えたことが嬉しそうな笑顔だ。


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